燃料電池や空気電池の普及を加速する、エコで安価な新触媒を開発

AZUL Energy株式会社

宮城県仙台市青葉区一番町1-9-1
仙台トラストタワー 10階 CROSSCOOP内
https://www.azul-energy.co.jp/
問い合わせ:info@azul-energy.co.jp

燃料電池の触媒として使われている希少金属「プラチナ」を置き換える、安価で量産可能な画期的な新しい触媒「AZUL」を開発。空気中の酸素で発電する「空気電池」の触媒としても用いることができ、低炭素社会の実現を支える新世代の電池開発に挑んでいる。

「顔料」研究のセレンディピティーが「新たな電池」を産んだ

東北大学材料科学高等研究所で、カラーフィルタの開発など「顔料」の研究をしてきた藪浩准教授。異分野の「電池」で画期的な新素材を生み出したのは「まさにセレンディピティーだった」と振り返る。藪研究室に所属し、電気化学を専攻していた阿部博弥さん(現取締役)が、燃料電池の触媒として青色顔料を使うことを思いつき実験したところ、触媒として十分な性能が出ることがわかったのだ。

現在の燃料電池の触媒には希少金属の「プラチナ」が使われており、その資源の希少さと高価さが普及を妨げる一つのネックになっている。そんな状況を打開しうる、新触媒の発明。燃料電池や空気電池の普及の糸口になるはずだと、藪准教授は長年機能性フィルムなどの分野で共同研究をしていた富士フイルムの伊藤晃寿さんに声をかけた。

元々大学で燃料電池・太陽電池等の次世代電池の研究室に所属していた伊藤さんは「電池分野で新たな材料が出ることがどれだけ革新的なことかわかっていた」。話を聴くうち、大きな驚きとともに「これは低炭素化社会に間違いなく貢献する技術だとわかった。世の中へのインパクト、可能性が十分あると感じた」という。会社を辞める決断をし、藪准教授とともにこの新触媒の普及を目指す「AZUL Energy」を2019年設立、代表に就任した。

燃料電池、空気電池の新触媒として注目を集める「AZUL」

AZUL Energyが開発した触媒「AZUL」は、新幹線の塗装などに使う青色の顔料と炭素を混ぜることで製造できる。燃料電池で用いられているプラチナと比べ、製造コストは10分の1程度で済むといい、希少資源が枯渇する心配もない。耐久性や安全面でも、従来の触媒を上回る性能を持つという。

会社設立後は燃料電池メーカーや自動車メーカーなどから問い合わせが相次ぎ、企業との共同研究も進めてきた。自動車などの搭載に向けては、新触媒に合わせて既存製品の設計を変更する必要が出てくるなど課題もあるが、伊藤代表は「共同研究で、性能についてポジティブな結果が出てきている。触媒の製品化に向けて、供給できる技術、量産技術に取り組んでいるところ。今年2月に受けた出資(※フューチャーベンチャーキャピタル・MAKOTOキャピタルより6000万円の資金調達を完了)で、量産のための設備を整えている」と自信を見せる。

燃料電池の中でも注目されている用途が、「空気電池」の触媒だ。空気中の酸素をエネルギーに変える空気電池は、イヤホンやスマートウォッチなど、小型で身につけられる電化製品「ウェアラブルデバイス」の電池として近年需要が高まっている。空気電池は触媒としてマンガンを使うのが一般的だが、比較的安価な一方で安全面で課題があり、環境負荷も高い。これを「AZUL」に置き換えれば、安全で低環境負荷な電池が実現する上に、「電池としての性能をもっと向上させることができる」(藪准教授)という。

同社は大手電池メーカーとタッグを組み、「AZUL」を使ったシート型の空気電池の開発と用途探索も進めている。伊藤代表は「大企業はどのくらい売れるのか市場予測できないと量産化には踏み切れず、数十億以上の売上規模が求められる。一方でベンチャー企業は数千万~数億の売上でも動くことができる。大企業では投資コストが見合わないところを、ベンチャーが助走をつけるという風に、まずリスクを先にとって製品化に取り組んでいこうと考えています」と話す。

「地球規模の低炭素社会」の実現を目指して

「我々が燃料電池と空気電池でやろうとしているのは、地球規模での低炭素社会の実現なんです」と、伊藤代表は大きな展望を語る。「現在の生活は充電できるリチウム電池に頼っているが、危険性や資源問題などの負の側面が大きい。人類の生活としての持続性を考えたとき、5年後、10年後のエネルギー問題を解決するのは燃料電池、空気電池だと確信している。電池の資源問題や環境負荷を解決できる電池を我々が実現し、貢献していきたいと考えています」

同社は発電量が不安定とされる再生可能エネルギーの普及を促進すべく、将来的に「蓄電できる空気電池」を開発する構想も抱く。藪准教授は「現在の蓄電池はリチウムイオンを使っているが、東日本大震災のように津波が来たときそれらの電池は原理的に燃える可能性がある。安全性を考えたとき、空気電池はその一つの解になるはず。これは東北の『東北大発ベンチャー』としてやる意味があることではないか」と期待を込める。

「顔料」の研究室から生まれた、地球規模の低炭素社会を実現しうる画期的な新素材。藪准教授は「研究者として一つの分野に集中して研究を掘り下げるのも大事だが、産学連携を進めてちょっと横を見てみると、何か発見がある。研究者も『ちょっと横を見る』余裕を持ち、産学連携の仲間を多く作っておくと、自分の世界が広げられるはずだと思っています」と、笑顔を見せた。

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