老朽化が進む日本のインフラをICTで救う「土木ITベンチャー」

株式会社インフラ・ストラクチャーズ

問い合わせ:http://infrastructures.jp/inquiry/
https://infrastructures.jp/
仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-11 総合研究棟11階 1106号室

高度経済成長期に急速に整備された日本のインフラが今、次々と老朽化の危機を迎えている。道路や橋、トンネルなどの維持や修繕には多額のコストがかかるが、少子高齢化が進む地方自治体ではその人手や費用を負担するのが今後ますます困難になるのは明らかだ。

東北大学大学院工学研究科インフラ・マネジメント研究センターから生まれたベンチャー企業「インフラ・ストラクチャーズ」は、AIやドローンなどのICT技術を導入することで、インフラの点検や修繕のコストを大幅に削減。さまざまな土木作業の効率化をはかることで、将来にわたって日本の安全なインフラを維持することを目指している。

アナログな土木工事の現場に最先端の技術を

インフラ・ストラクチャーズ社は、東北大学大学院工学研究科に2014年に設立された「インフラ・マネジメント研究センター」から生まれた土木ITベンチャーだ。センター長の久田真教授は同センター設立の目的をこう語る。

「日本には70万の橋と1万個のトンネルがあり、それが今、一斉に老朽化しています。それらの管理主体は地方自治体。少子高齢化で税収や人手が少なくなっている一方、インフラがだめになれば国民が被害を受ける。そこで、作業の効率化、高度化を研究することが不可避になっているんです」

当時は民間企業に所属していたインフラ・ストラクチャーズの早坂洋平代表も、同センターの設立当初から東北大学の研究員として参画。ICTを活用したインフラ工事の効率化の研究に取り組んできた。

「当時所属していた会社では高速道路の点検をしていたのですが、壊れているところを作業員が写真を撮って、スケッチして、社内で図面化するーーという、とても手間がかかることをアナログな作業でやっていました。土木の分野は先端技術に入り込めておらず、やきもきしていたときに東北大学のプロジェクトに参画したんです」

同センターのコンクリート構造物のひび割れをモニタリングするシステムの研究開発は、2014年の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトに採択。2018年にはAIを活用した構造物のひび割れ検出システムの開発が東北大学ビジネス・インキュベーション・プログラムの育成部門に採択され、技術の実用化までこぎつけた。「研究成果を足がかりに、ビジネスとしてしっかり世の中の役に立てていこう」と2019年、同センターから派生したベンチャーとして「株式会社インフラ・ストラクチャーズ」が設立された。

ドローンやAIで、道路や橋のひび割れを特定

同社はインフラの点検や維持、修繕の過程にICT技術を導入し、その作業効率を上げることで作業全体のコストダウンをはかる。現在展開するサービスは大きく分けて「点検調書作成サービス」と「インフラ維持管理支援サービス」の二つだ。

「点検調書作成サービス」では、道路や橋などのインフラの点検作業にドローンやAIを導入する。これまでインフラの点検は作業員が構造物に近づき、目視によって確認、撮影がされてきた。構造物によっては高所作業車や橋梁点検車など専用の車両を出動させる必要があり、多くの場合点検中は通行規制もかかるため、点検作業のコストは膨らんでいた。

同社はこうした点検作業をドローンで代替。ドローンが複数の写真を撮影し、AIでその写真を一枚につなぎ合わせ、ひび割れている箇所をAIが判断する。これにより構造物全体の写真や損傷箇所が正確に図面上で把握できるだけでなく、専用車を出動させたり規制をかけたりするコストが削減できる。東北大学との実証実験では、同社の方法で一度の点検にかかるコストが従来の25%削減できたという。

ドローンを使って撮影した橋。AIが複数の画像を一枚につなぎ合わせ、ひび割れ箇所を特定する

構造物の「データベース」が、より強いインフラを作る

「インフラ維持管理支援サービス」は、同社の開発した統合データベースに構造物の情報を記録。過去の記録と照らし合わせながら損傷の時期や要因を特定し、修繕方法の提案、コスト算出、設計までを一貫して行うサービスだ。

地方自治体や企業に紙で残されていた設計図や定期点検での書類もデータ化し、それらの情報を必要なときに呼び出して参照することで、設計時の考えを確認したり、発見された損傷が有害かどうかを判別したりして修繕に生かすことができるという。

「特に地方自治体の職員には異動があります。東日本大震災から10年が経って、あのとき建設された構造物はもう当時の担当者しか知らない、ということが実際に起きている。そんなときデータベースがあれば、その痛みがいつできたのか?を特定することができます」と、久田教授はデータベースの意義を強調する。

データベースの活用は仙台市や宮城県のほか、山形県や島根県などでも導入が進む。今後はさらに全国への拡大を目指すという。「全国各地のさまざまな構造物のデータが蓄積していけば、地域比較などデータから新たな研究ができる。例えば降雪の多い地域は構造物が痛みやすいなど地域の特性がわかれば、それに合わせた形で構造物の設計が可能になるかもしれない。そうなれば理想的ですよね」

研究とビジネスのいいスパイラルを目指して

2019年の会社設立から3年目を迎えたインフラ・ストラクチャーズ。早坂代表はビジネスとしての手応えを、「じわりじわりと種まきをして、今ようやく芽が出てきた」と実感を込めて語る。同社は仙台以外にも広島、島根、長崎と全国に拠点を設け、今後は地方自治体や民間企業への営業だけでなく、各拠点の企業と提携したジョイントベンチャー(共同企業体、JV)として国の入札にも参加していく考えだ。「とにかくアンテナを広げて色んな先端技術をいち早くキャッチして、より省力化できる技術を研究し、より効率的なインフラの維持管理ができるようになれば」と早坂代表は話す。

久田教授は、大学と大学発ベンチャーとの間にいい関係性が生まれていると評価する。「大学の大きなミッションの一つは社会貢献。それを具現化するには、大学発ベンチャーはふさわしい形の一つだと思います。そこで得られたデータがまとまれば今までになかった研究ができるようにもなり、いいスパイラルが生まれるはず」と期待を膨らませる。

「今の老朽化したままのインフラを次世代に渡すのは、私たちの責任として『なし』だと思う。ここまでは自分たちがやったから、あとはこのインフラを使って素晴らしい未来を築いてね、というバトンを渡したい。あと10年、20年後には車の自動運転が始まると思いますが、そのとき道路がでこぼこで工事中で通行止めってなしだよね、と思います。そのときには老朽化しないような強靭なインフラであってほしいし、そういう未来のための研究をしていきたい」と、久田教授。

早坂代表は「インフラ・ストラクチャーズは失敗してもいい会社、という風に考えています。失敗してこそ、次にいいことができる。失敗の積み重ねもデータベースに残して、次世代に残していきたい。その中で、いいものが出てくるはず。失敗を恐れず、新しい挑戦をどんどん続けていきたい」と力強く話した。

東北大学ベンチャーパートナーズ

東北大学連携ビジネスインキュベーター

東北大学スタートアップガレージ

東北大学

東北大学 産学連携機構