多層膜光学素子の開発とテイラーメイドX線光学素子の開拓
更新:2024/06/12
- 概要
X線は進行方向を変える(レンズを作る)ことが難しく、ミラーで反射させることで集光させます。このとき、一層の厚さが数nmの極薄多層膜を曲面に沿って精密に膜厚制御されたミラーを用いると、直入射で高反射率が得られます。この原理を用いることで、実験室の光源でも明るく解像度の高い軟X線顕微鏡が実現できます。
- 従来技術との比較
軟X線の反射波長は多層膜の層厚と入射角に依存します。結像ミラーでは曲面に沿って入射角が変わるため、精密な層厚制御なしでは反射する軟X線の波長が変わり、明るい顕微鏡が実現できません。
- 特徴・独自性
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- 速度可変シャッター機構を使ったイオンビームスパッタリング成膜による精密膜厚分布制御成膜法
- 4枚の直入射ミラーで反射波長を一致させた実験室光源を用いた軟X線顕微鏡
- 精密膜厚分布制御成膜法により、基板面内で反射波長が連続的に変化する硬X線ポリクロメーターの実現(放射光施設内の白色ビームラインでの応用)
- 実用化イメージ
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収差が小さく明るい軟X線顕微鏡を実現できます。生物細胞の内部構造の観察や軟X線露光装置に用いるマスクの検査等の用途への適用が期待されます。
- キーワード
研究者
国際放射光イノベーション・スマート研究センター
基幹研究部門
機能情報計測スマートラボ
羽多野 忠 助教
博士(理学)(東京大学)
Tadashi Hatano, Assistant Professor