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研究者紹介

福島 誉史 准教授 

2023.03.07
東北大学 大学院工学研究科 機械機能創成専攻
准教授 福島 誉史 (ふくしま たかふみ)先生

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●INTRODUCTION●
人工知能社会・ポスト5G社会の実現に欠かせない先端半導体の製造技術は、国として研究開発
が加速されている分野の一つです。限界に近付きつつあるとも言われる回路微細化技術の進歩
と並行して、機能や材料の異なる半導体やデバイスを効率的に3次元集積したシステムとして
高性能化する実装技術に注目が集まっています。東北大学は世界に先駆けて3次元積層型集積回
路(以下、3D-IC)の研究を進めてきました。この分野を牽引する若手研究者である福島先生に
お話を伺いました。
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 半導体といえば、皆さんは数nmの回路微細加工やムーアの法則(半導体の集積率の増加法則)
を思い浮かべるでしょうか。私の専門は半導体実装工学と呼ばれる分野で、電気電子工学だけ
でなく、機械工学、材料工学が横断する領域です。半導体製造の後工程プロセスにおいて、半
導体チップとメモリやセンサ等様々な機能を持つチップを3次元に集積することで、半導体シ
ステムとしての高性能化を実現しています。
 
 写真1:インタビューに応じる福島先生。
 
 3D-ICでは、機能ごとのチップを精度よく積層し、層間を導通するためにTSV(Through-Silicon
Via)と呼ばれるシリコン層を貫通する穴をあけ、金属を充填した垂直配線により上下のチップが
接続されます。面積を小さく、配線の長さを短く出来、電力消費も抑えられます。昨今、世界中
で研究開発競争が激化していますが、東北大学は3D-ICの研究を世界に先駆けて立ち上げており、
私もこの研究に20年近く携わっています。300mmウエハを使って3D-ICを試作製造できる世界で
も稀な研究開発拠点「GINTI(ジンティと読みます)」を運用していて、国内外問わず世界中
から相談が来ます。
 
図1:3D-ICの概念図。色が特定機能のチップを示す。層間はTSVで導通している。
 
 3D-ICの実現には様々な要素技術が必要です。
 1つ目は、シリコン層に深い穴を開け銅めっきで縦方向に配線形成するTSV技術です。主な
工程は5つあり、径が数μm(時には1μm以下)、深さ方向が数十μmから100µm以上といった
レベルで細長いのが特長です。細長くなるほどに作製には高度な技術が必要です。
 
 2つ目は、チップ同士の直接接合技術です。これは、現在NEDOのポスト5Gプロジェクト
により産学連携体制で開発している最中ですが、接合面同士を非常に平坦、且つクリーンに保
ち、はんだレスで金属同士を原子レベルで接合する技術です。
 
 3つ目は、積層するチップを高い精度で位置合わせする技術です。液滴を乗せたチップ上に、
接合したいチップを落とすと表面張力によりチップが整列します。その後のインターコネクト
まで意識したこの技術を自己組織化実装(セルフアセンブリ)と呼んでいます。3D-ICに限ら
ず小さなコンポーネントを大量に素早く並べたいというニーズに応えられます。例えば、数十
μm角のマイクロLEDチップを精度良く並べられることを検証しており、フレキシブルディス
プレイに応用する技術も持っています
 

図2:チップのセルフアセンブリ技術の概念図。チップが一瞬でピタリと整列する。
 
 3D-ICは台湾TSMCや、韓国Samsung、米Intel、日本ではSony等の工場で製造されています
が、非常に限られた大規模生産でしか利用できず、歩留りとスループットに関しては課題もあり
ます。我々はそれらを解決するアプローチに取り組みながら、アカデミアの方でも利用できる小
規模のプロトタイプ3D-ICを試作できる環境を立ち上げました。研究要素があれば私が共同研究
でお受けできるものもありますし、加工依頼であれば東北マイクロテック株式会社(東北大学発
ベンチャー)が対応できます。
 
 
写真2:福島先生と3D-ICが作り込まれた300mmシリコンウエハ。ウエハ上の半導体システム
は数センチ角サイズと大きめ。この後はインターポーザ(中継基板)と呼ぶモジュール単位で
切り出し、プリント基板に搭載して使用する。
 
 
写真3:FHEに関する研究成果:フレキシブル素材に埋め込まれた3D-IC(左)とチップレット
(小さく分割設計されたチップ)(左中)、およびハイドロゲルに埋め込まれた半導体チップ
(右中)。右はセンサをネイルチップの裏につけて生体情報をセンシングするデモ品。
 
 実は、私はもともと機能性高分子を研究しており、感光性樹脂材料で学位を取りました。材料
への基本的な理解があることは新しい挑戦への後押しをしてくれていると感じます。フレキシブ
ルデバイスでも集積化が求められており、研究大学強化促進事業「若手リーダー研究者海外派遣
プログラム」で2016-2017年に一年半滞在したUCLAで開始したフレキシブル・ハイブリッド・
エレクトロニクス(FHE)の研究にも力を入れています。最近、フレキシブルディスプレイの技
術をさらに展開させ、フレキシブル蓄電デバイスに展開する試みを始めました。米国UCLAと共
同で開発を進めており、5月末には対外的にも発表できる予定です。新しい取り組みにもどんど
んチャレンジしていきたいと思っています。
 
 産学連携という意味では、国の方針の影響もあり、材料から装置まで多くの企業からコンタク
トを受けています。個別の企業連携はきちんと重複の無いよう線引きをしつつも、折角大学が間
に入りますので、相互連携を促進できるところを見極め、3D-IC試作製造拠点GINTIを中心に私
たちならではの相乗効果を出したいです。先端技術をより発展させることは大学のミッションの
一つですから。企業だけでなく、複数大学と組んだ国プロもいくつか立ち上がっています。最先
端のテクノロジー開発に向けて、各プロジェクトにとって最良の形を柔軟に考えたいといつも思
っています。
 
★産学連携ポイント★
・3D-ICや三次元実装技術に関心のある材料・装置メーカー
(多様な材料メーカーとの連携実績あり。新しい技術を一緒に作り込む等が可能)
・半導体設計を行っている企業やファブレスの企業
(チップを3次元化するアイディアを持っている企業)
・他、センサやμLED等、微細な製品の先端実装に関心のある企業
・3D-ICプロトタイプ試作
 
 
以上
 
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