研究者紹介
清水 信 准教授
2023.07.31
大学院工学研究科
機械機能創成専攻 エネルギー学講座(新エネルギー変換工学分野)
准教授 清水 信(しみず まこと)
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●INTRODUCTION●
GX実現のためには、エネルギーの効率利用が重要です。今回ご紹介する清水先生は、熱の効率的マネジ
准教授 清水 信(しみず まこと)
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●INTRODUCTION●
GX実現のためには、エネルギーの効率利用が重要です。今回ご紹介する清水先生は、熱の効率的マネジ
メントを研究されています。太陽光や産業界の排熱、或いはさらに低い温度帯で放出されている社会の
様々な「熱」をどのように利活用することができるのか、研究内容を伺いました。
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私は、熱の新たなマネジメント方法と電気への変換システムを実現したいと思っています。産業界で
使われるエネルギーの半分程度は熱であり、うち未利用排熱は3割以上を占めています。現在社会で失
われている熱を効率よく使うことによって、カーボンニュートラル社会の実現に大きく一歩近づくこと
が出来るのです。本日は様々な熱をどのようにして活用しようと取り組んでいるのか、私の研究テーマ
をいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
写真:研究資料を説明する清水先生。
まず、熱光起電力発電(TPV)技術についてお話します。太陽や工業炉のような熱源があるとき、こ
こからは様々な波長の電磁波(熱ふく射)が色々な方向に放出されています(紫外線や可視光、赤外線
など)。原理的に太陽光発電では可視光から近赤外線の範囲のエネルギーしか利用できません。一方、
TPVでは、熱源の熱を、一旦エミッターと呼ばれる微細加工を施した中間体が吸収します。その後、エ
ミッターは得られたエネルギーを特定波長で一方向に揃えて電磁波として放出します。これを光電変換
セルが電気に変える仕組みです。エミッターを使うことで、結果的により多くの熱源のエネルギーを集
めて光電変換セルに与えることが出来るため高いエネルギー効率(理論上80%以上)を達成することが
出来るのです。
図1:熱光起電力発電(TPV)技術概念図。
実際に、太陽光を熱源として高いエネルギー効率を実現するため、私たちの研究室ではSolar-TPV発電
システムをデザインしています。高温に耐え、良く光を吸収し放出するエミッターの設計等を今後も進め
ていく必要がありますが、世界トップレベルの発電効率(7.5%)を報告できています。
図2:Solar-TPV発電システムの写真(上)とシステム内部の概念図(下)。
熱源が比較的低温(体温程度~数百℃)の場合は、別の仕組みで熱を電気に変える必要があります。光
レクテナと呼ばれるデバイスを用いることで低温の熱源からの電磁波(中赤外光)も、通信電波のように
アンテナで受けて電気に変換することが可能となります。既存のデバイスでは、中赤外光を効率的に変換
することが出来ていませんでしたが、デバイス内のダイオード素子や全体の構造設計を改良し、世界最高
値の電流を取り出すことに成功しています。今後さらに改良を行い、低温度域の熱の電力利用を目指して
いきます。
図3:光波発電用レクテナ構造の概念図。共振器構造内部にMIMトンネルダイオード構造を組み込んであ
る。中赤外光を含む様々な波長の電磁波を効率よく電気に変えることが出来る。
上記のように、これまで様々な温度の熱源からの幅広い波長の電磁波を上手く電気に変換することに取
り組み成果を挙げてきました。他にも、電子デバイスの発熱を効率よく放熱させる仕組みの検討や、熱ふ
く射波長における微細共振器構造を反応場としてメタンや二酸化炭素を改質し水素を合成するなどの取り
組みも行っています。これからも、持続可能で効率的なエネルギー変換に関する研究に幅広く取り組んで
いきたいです。これらの研究に関心のある方との協働ができればと思っています。
★産学連携ポイント★
・熱源からの熱輻射の利活用(特に高温熱源はより効率的な変換が可能)
・電子デバイスの放熱
・熱光起電力発電(TPV)技術
・光レクテナを活用した熱の電力変換技術
・熱ふく射波長における微細共振器構造を用いた水素生成反応促進
・新しい視点での輻射伝熱制御
・電子デバイスの放熱
・熱光起電力発電(TPV)技術
・光レクテナを活用した熱の電力変換技術
・熱ふく射波長における微細共振器構造を用いた水素生成反応促進
・新しい視点での輻射伝熱制御
・知的財産
熱吸収材及びその製造方法 :特許第6224345号
波長選択性熱放射または熱吸収材料の製造方法:特許第5725658号
熱吸収材及びその製造方法 :特許第6224345号
波長選択性熱放射または熱吸収材料の製造方法:特許第5725658号
以上