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研究者紹介

久保田 健吾 准教授

2024.05.30
環境科学研究科
准教授 久保田 健吾 (くぼた けんご) 先生 
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●INTRODUCTION●
循環型社会、サステナビリティと言えば、プラスチックやごみ処理問題を連想するかもしれません。しかし
さらに身近で根源的な課題として、綺麗な水を日常的に使うことが出来る日本の環境は今後も維持していけ
るのかという「水利用の持続可能性」について意識したことがある方は少ないのではないでしょうか。今回
は微生物の力を利用した排水処理システムの研究開発を専門とする久保田先生にご研究内容を伺いました。
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 私は、微生物の力を使った排水処理システムの研究開発を進めています。カーボンニュートラルを含めて
持続可能な社会の実現が叫ばれていますが、水利用という視点では、先進国の排水処理技術は非常に大きな
エネルギーがかかる・開発途上国においてはコスト等の理由からそもそも十分に排水処理技術が普及してい
ないといった課題が存在しています。また、限られた資源を排水から回収するというニーズも高まっており
このような水環境に関する社会課題を解決するための研究開発を進めています。
 
【写真1】研究内容を説明する久保田先生。右は微生物を観察する落射蛍光顕微鏡。
 
 具体的な研究テーマを2点ご紹介します。1点目は、排水処理において生じる亜酸化窒素(N2O。地球温
暖化ガス)の効果的な除去です。先行研究では、N2Oの発生自体を防ぐ、あるいは低減するためのアプロー
チが大半でしたが、我々は発生したN2Oを除去するシステムを開発しています。DHS(Down-flow Hanging
Sponge)リアクター(※1)と呼ばれる技術を取り入れていますが、これは円筒の中にスポンジ担体を連ねて
ぶら下げ、スポンジに保持された微生物によってN2Oを還元し除去するシステムです。シンプルな系ですが
95%以上のN2Oを高速に処理することができることが確認できました。現在は、より性能を高めるための改
良を進めるとともに、担体に保持された微生物群のゲノム解析などの研究も行っています。
 

【図1】:DHS(Down-flow Hanging Sponge)リアクターの実験装置の写真

 2点目は、排水処理プロセスに植物を組み入れることによるエネルギーネットゼロの下水処理の達成です。
排水処理の実施にはエネルギーを投入する必要がありますが、排水から資源やエネルギーを回収することを想
定しました。例えば日本の大規模な下水処理で広く普及している好気性の活性汚泥法では、エネルギーを使っ
て排水中に含まれる窒素やリンを除去しています。そこで窒素やリンを吸収する植物としてウキクサを選定し
処理水での生育を試みたところ、ウキクサの生育に伴い窒素・リンが除去可能であることが分かりました。
 この生育したウキクサは、バイオマス資源として活用してエネルギー化、あるいは豊富なタンパク質を含む
特性を利用して飼料化するなど様々な利用が見込まれます。

  
【図2】: ウキクサを組み入れた排水処理プロセスの概要図

 主にはまずエンジニアリングの観点でこれらのテーマを進めていますが、研究者としての好奇心も重要なモ
チベーションです。元々、微生物の高感度検出で学位を取得したため、環境中の微生物解析にも強い関心があ
ります。排水処理プロセスには、多様な微生物群の反応が関わっており非常に複雑で、ブラックボックスとも
呼ばれていました。微生物群の解明、働きを理解することは将来的にはより良いプロセス開発を支えてくれる
基礎的な知見ですので、そのような基礎研究もしっかり進めていきたいと思います。
 将来的には、現在研究している要素技術を組み込み、先端的な水環境システムの構築を先導していきたいと
考えています。
 
★産学連携ポイント★
・微生物を利用した排水処理技術・資源回収・バイオプロセス
・水環境システムの開発
 
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東北大学研究者紹介
 
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※1:DHS(Down-flow Hanging Sponge)リアクター:高濃度汚泥を保持し保水性を有するスポンジ状
担体を充填した装置の上部から下水を散水し生物処理を行う下降流プロセスのこと
 
以上
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