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研究者紹介

大田 昌樹 准教授

2024.03.29
大学院工学研究科 附属超臨界溶媒工学研究センター 溶媒要素技術部
准教授 大田 昌樹 (おおた まさき) 先生 
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●INTRODUCTION●
今回はグリーンで省エネな抽出分離技術である超臨界・亜臨界抽出分離技術が専門の大田先生にお話を伺い
ました。大田先生はご自身の技術を活用し、みかんの皮や藻類等から様々な有効成分の抽出・活用を進める
プロジェクトを実施しています。地球と人にやさしい循環型社会の構築を目指して、研究を進めています。
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 私は、東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センターに所属し、超臨界抽出法や亜臨界分離
法についての研究をしています。このセンターは、国内では唯一の「超臨界」と名の付くセンターで、長年
に亘り多くの実績を積んできました。
 
写真1:実験室にて、超臨界抽出分離装置と大田先生。
 
 さて、物質は固体、液体、気体の状態を取ることが知られていますが、ある温度と圧力(臨界点)を超え
るとそのいずれでもない「超臨界」流体という状態になります。気体と液体の性質を併せ持った状態になる
ということです。こうした特殊な状態の流体は、温度と圧力の操作により物質を溶けやすくする等、溶媒の
特性や性質をコントロールすることが出来るため、様々な使い方をされています。
 
      
【図1】純物質の相図の概念図。超臨界流体状態では、水は液体と気体の性質を併せ持ちます。
 
 ちなみに、私が良く使う二酸化炭素は、超臨界流体の状態にすることでヘキサンやトルエンなどの有機溶
剤と似た性質を示します。つまり、有機溶剤を使わなくても二酸化炭素により、天然物などから様々な物質
(溶質)を溶かし出すことが出来るということです。産業界では、コーヒー豆からのカフェイン抽出やビー
ルのホップエキスの抽出などに活用されている事例が有名です。勿論、二酸化炭素に水やアルコールを添加
することも可能です。食品や化粧品では有機溶剤の残留が無いことはメリットですし、環境負荷を減らす意
味でも超臨界流体はグリーンな溶媒として期待が高まっています。
 
 ここで「亜臨界」についてもここで触れますと、亜臨界流体というのは大まかには、臨界点より低い温度
・圧力領域の気液混相流体を指します(図1で示すと臨界点左下の領域)。亜臨界領域の流体についても超
臨界流体とは異なるものの、高い溶解性を示すことが知られています。より温和な条件での抽出分離を可能
とするため、省エネルギーでグリーンなプロセスに適していると言えます。
 
 物質・状況に合わせて、適切な抽出技術の選択が重要です。我々の強みとして、様々な物質の検討で蓄積
されてきた技術・ノウハウ・理論構築のバックグラウンドがあり、高い収率や選択性が実現できます。超臨
界抽出は活用している企業もあるかもしれませんが、私たちと連携するメリットとしてはそうした蓄積の活
用、最先端の知見の適用という面があると思います。
 

図2:超臨界抽出技術と亜臨界分離技術(装置概要)。
 
 上述のように我々の技術は抽出分離、つまり分けづらいものを分ける、取り出すという技術です。今後循
環型社会を確立させていく上では、現在取り出しづらいがゆえに廃棄されてしまっている価値のある物質を
回収し役立てていくことへのニーズはどんどん高まっていくと考えます。昨年度はNEDO事業に採択頂き、
小型の超臨界・亜臨界抽出分離装置の開発にも着手出来ました。
 
 本技術は様々な物質に利用できる汎用性のあるものですから、今後は完成予定の小型装置も活用し、様々な
産業界のニーズのヒアリングを加速したいと考えています。バイオマスとして、藻類の利用、果皮等の食品残
渣の活用から、生薬や食品の開発を想定し様々な検討を進めています。それぞれの物質に固有の課題が出てく
れば、技術的な解決策を検討しますしさらに事業として成立させるという段階も想定し、我々の分野以外の方
々と密に連携を取ることについても柔軟に考えています。
 
 様々な活動を通して、今後さらに産業界で超臨界・亜臨界技術が活用されていくと嬉しいと思います。アカ
デミアの人間として、この分野をもっと盛り上げていくべく、学術的な意味での新しいチャレンジもどんどん
取り込んでいきたいです。
 
★産学連携ポイント★
・廃棄物等からの高付加価値成分の抽出分離
(粉体・液体等(食品残渣等)からの抽出)
・有機溶媒フリーの抽出分離
・果物・藻類からの有用成分の抽出分離
・超臨界・亜臨界流体の利活用
 
↓↓もっと知りたい方はこちら↓↓
東北大学研究者紹介
【東北大学研究シーズ集】
 
【知的財産】
出願番号:2022-198740(超臨界・亜臨界流体装置に関するもの)
出願番号:2022-192488(超臨界・亜臨界抽出分離のシミュレーションに関するもの)
 
以上
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