金魚を用いたHTP一本鎖抗体取得技術
更新:2024/07/05
- 概要
コイ科魚類の中で抗体の多様性が最も大きい金魚(スイホウガン)を活用することで、哺乳動物では取得困難な抗体をハイスループット(HTP)に作製することができる。すなわち、免疫後の水泡液から全RNAを精製し、次世代シークエンサーを用いたRNA-seqを行うことで免疫グロブリン(Ig)重鎖および軽鎖の両遺伝子の塩基配列を網羅的に取得するとともに、試験管内で一本鎖抗体を作製することに成功した。
- 従来技術との比較
従来の特異的抗体の取得ではマウスなどの実験哺乳動物を用いるのが一般的であったが、ヒトGPCRなどに対する抗体は免疫寛容が起こって、しばしば取得が困難であった。金魚(スイホウガン)は少量の抗原タンパク質で、数週間で免疫が完了する。また、水泡液を何回採取しても、再び水泡液量が元に戻るとともに、水泡液内の抗体濃度は何度採取しても一定量であったことから、1個体で継続的な抗体作製が可能である。
- 特徴・独自性
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- スイホウガンは眼下にリンパ液を含有する水泡を有する愛玩魚であり、実験魚としては用いられてこなかった。キンギョIg遺伝子は他のコイ科魚類(ゼブラフィッシュやコイなどと比較して、可変領域のアミノ酸配列の多様性が大きく、哺乳動物には見られないユニークな一本鎖抗体を作製することができる。
- 実用化イメージ
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CAR-T細胞療法に用いられるscFv(single-chain variable fragment)を簡便に作製できることから、テーラーメイドなscFvを提供するプラットフォームを提供できる。
- キーワード
研究者
グリーンクロステック研究センター ソフト・機能マテリアル部門/大学院工学研究科 バイオ工学専攻 生物有機化学講座(生物資源工学分野)
田丸 浩 教授
博士(学術)(三重大学)/修士(生物資源化学)(三重大学)
TAMARU Yutaka, Professor
生物工学、生化学・分子生物学を基礎とした細胞・個体レベルのサーキュラー・バイオエコノミーを展開している。