指定難病を治療する薬剤候補の探索
更新:2024/11/27
- 概要
電気生理学的手法と効率的かつ段階的なスクリーニング法を組み合わせたハイスループット電位依存性ナトリウムチャネル(Voltage-gated sodium channels, Nav)阻害剤スクリーニング法を確立した。本事業では化合物ライブラリーや生物材料を提供して頂き、神経障害性疼痛や各種心臓病等を治療するNav阻害剤を探索する。
- 従来技術との比較
Navの挙動観察用に開発されたハイスループット系はNav電流を直接、観測していないため、偽陽性反応が生じる欠点をもつ。本事業ではNav電流を直接、観測でき、Nav阻害作用の有無を正確に評価できる電気生理学的手法に対してハイスループット性を保持させた革新的な戦略を適用する。そのため、見い出された物質そのものが薬剤候補となると考えている。
- 特徴・独自性
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- 電気生理学的手法は0.01秒程度の超短時間で開閉し、1細胞あたり僅か109分の1アンペア(1 nA)程度のNav透過電流を観測する戦略である。高い専門性を必要とする電気生理学的手法は阻害作用の有無を正確に評価でき、薬剤候補を探索する手段として独自性が高い。本手法に、4段階で構成される効率的かつ段階的なスクリーニング法を組み合わせる。化合物ライブラリーをグループに分けて実施する第1段階、陽性グループ中の化合物を連続投与する第2段階では、複数のNavサブタイプを安定発現し、ハイスループット性に秀でたNeuro 2A細胞を用いる。続いて、単一Navサブタイプを発現させたHEK293T細胞に単一化合物を投与する第3段階、電気生理学的に[静止―活性化―不活性化]状態にある各Navを抽出し、単一化合物によりいずれの状態が阻害されるかを調べる第4段階を経て完了する。この特徴的な最終段階は作用機序解明を実現する生理活性測定戦略と位置付けられる。
- 実用化イメージ
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先天性筋無力症候群、非ジストロフィー性ミオトニー症候群、ドラべ症候群など患者数が少なく収益を得られにくい指定難病や心臓疾患の治療に貢献する。
- キーワード
研究者
大学院農学研究科
農芸化学専攻
食品天然物化学講座(天然物生命化学分野)
此木 敬一 准教授
修士(理学)(東京大学)/博士(理学)(東京大学)
Keiichi Konoki, Associate Professor