応答挙動に基づくシングルチャンネルマルチガスセンシング材料の開発


更新:2025/07/04
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概要

本技術は、単一のセンサーチャンネルで複数のガスを識別可能な「応答―挙動選択性」型ガスセンサーの開発に関するものです。VO₂(M1)相をベースに、元素ドーピングによって電子構造を制御することで、アンモニア(NH₃)や硫化水素(H₂S)などのガスに対して異なる応答挙動(上向き/下向き)を示し、混合ガス中でも高精度な識別を実現します。室温で作動可能であり、ヘルスケア分野への応用が期待されています。

従来技術との比較

従来の半導体型ガスセンサーは「応答―強度選択性」に依存しており、類似した性質を持つガスの識別が困難でした。また、複数のガスを検出するには多チャンネル構成が必要で、デバイスの小型化や低消費電力化に課題がありました。本技術では、シングルチャンネルでマルチガス識別を可能にすることで、干渉を抑えつつ高い選択性を実現しています。

特徴・独自性

「応答挙動―選択性」という新しいセンシング概念を提案し、ガス応答の方向性(正方向/逆方向)に基づいて識別を行います。理論計算により応答挙動を予測し、元素ドーピングによってその制御が可能である点が独自性です。さらに、フレキシブルなセンサーチップの製作が可能であり、ウェアラブルデバイスへの応用にも適しています。

実用化イメージ

排便・排尿を識別するスマートおむつや、呼気による健康状態のモニタリング、VOC検出などの用途が想定されています。今後は、MEMS技術やIoTとの連携により、デバイスのさらなる小型化や信号伝達の効率化を図りながら、実用化に向けた開発を進めてまいります。

キーワード

研究者

多元物質科学研究所

Yin Shu 教授 
博士(工学)(東北大学)/M.S.(中国科学院)

Yin Shu, Professor

ソフトプロセス合成・微粒子・形態制御
光関連機能材料・色材
二次元化合物
ガスセンサー