ビル影などによる無線通信障害を解消する液晶リフレクトアレイ


更新:2025/07/04
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概要

本技術は、5G以降の高周波無線通信において、ビル影などによる通信障害(カバレッジホール)を解消するための液晶リフレクトアレイの開発に関するものです。液晶層に縦方向と横方向の電界を印加する「2方向電界駆動方式」により、液晶分子の配向を高速かつ安定に制御することが可能となりました。これにより、従来課題であった厚膜液晶の応答遅延を克服し、ミリ波帯での電波反射方向の制御を実現します。

従来技術との比較

従来のリフレクトアレイには、バラクタダイオードを用いた高速制御方式や、液晶を用いた単純構造の方式がありましたが、それぞれに課題がありました。特に液晶方式では、液晶の厚膜化による応答遅延(数秒〜数十秒)が問題でした。本技術では、液晶層にストライプ状電極を設けることで、縦・横両方向から電界を印加し、応答時間を500ms以下に短縮することに成功しています。

特徴・独自性

本技術の最大の特徴は、2方向電界駆動による液晶分子の高速応答制御です。これにより、厚膜液晶でも低電圧(30V以下)での駆動が可能となり、映像表示や通信制御においてほぼ違和感のない応答性を実現します。また、液晶配向のシミュレーション技術を活用し、電極構造の最適化によって誘電率変化を最大化する設計指針も確立しています。

実用化イメージ

本技術は、ミリ波・テラヘルツ帯の電波制御に応用可能であり、リフレクトアレイ、フェーズドアレイアンテナ、可変遅延線、ビームフォーマなどへの展開が期待されます。今後は、液晶材料や電極構造の最適化を進め、実際のミリ波反射特性の評価を通じて、通信インフラへの実装を目指してまいります。

キーワード

研究者

大学院工学研究科

藤掛 英夫 教授 
博士(工学)(東北大学)/工学修士(東北大学)

Hideo Fujikake, Professor