オンライン取引における約款の拘束性に対する消費者の評価
更新:2025/08/21
- 概要
COVID-19パンデミック以降のオンライン取引増加に伴う問題として、消費者が約款を詳細に読まずに「同意」する行動が,約款の法的拘束力についての消費者による評価にどう影響するかを検証した研究です。米国の先行研究を基に、日本の一般消費者を対象にオンライン実験を実施し、金融商品とスポーツクラブの異なる仮想シナリオで、説明方法や詐欺的条件を含むケースに対する消費者の反応を分析しました。
- 従来技術との比較
先行研究が対面取引を扱ったのに対し、本研究は日本でのオンライン取引に焦点を当て、ウェブサイト上の説明がもたらす効果,消費者の購買行動を細分化して各ステップごとのもたらす効果,および,金融商品とスポーツクラブといった異なる取引対象の影響を検証した点が独自のアプローチです。
- 特徴・独自性
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オンライン実験から、以下のことが分かりました。
① オンライン取引において、約款が存在することで消費者がその拘束力を強く認識する。不当な内容の約款であったとしても,そのような約款が存在し,それをクリック・タップすることで,消費者はこれに「合意」し,拘束されると思い込んでしまう。
② ウェブサイト上の説明が約款の拘束力を大きく強化する効果は限定的である。
③ 金融商品とスポーツクラブといった取引対象の違いにより、約款の拘束力に対する消費者の評価が異なる。日常的なスポーツクラブ取引では、消費者が不当な条件に対して、より厳しい評価をする傾向が見られる。 - 実用化イメージ
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本研究の結果は、政策立案や法改正を通じて公正な取引環境を築くための実践的な2つのことを示唆しています。
① 不当取引を防ぐために消費者保護法や解約ルールの強化が必要であること。
② 財やサービスごとに拘束力の影響が異なることから、分野特化型の政策策定が求められること。 - キーワード