コミュニティー・シェッドの効果検証と社会実装


更新:2025/10/02
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概要

壮年期・高齢期の人々の孤独・孤立を未然に防ぐことを目的に、「コミュニティー・シェッド(以下、シェッド)」を日本に導入し、効果を科学的に検証するプロジェクトを進めています。シェッドは、高齢男性のための居場所「メンズ・シェッド」としてオーストラリアで始まり、現在はイギリス・アイルランド・カナダ・アメリカなど多くの国に広まっています(全世界で3,000か所以上、10万人超が活動)。他のメンバーと肩を並べ自由に活動を行う中で、生きがい・やりがい・友人が見つかる居場所です。

従来技術との比較

日本では、退職後の高齢男性の孤立が深刻化しており、新しい役割や生きがいを見出す場が不足しています。我々のプロジェクトはSIAH(社会的アイデンティティアプローチ)やSocial Cureの知見に基づき、社会的アイデンティティ(帰属意識)の再構築を重視しています。従来技術が解決できなかった「所属」や「つながり」、「主体性の再獲得(エンパワメント)」に働きかける点で、シェッドは独自の価値を有します。

特徴・独自性

熊本県水上村の「寄部屋(よろうや)」や札幌市西区の「ポッケコタン」などの事例から、孤独感の軽減、身体的健康感・認知機能の改善、社会的つながりの拡大等の効果が確認されつつあります。肩を並べての共同作業(Shoulder to Shoulder)は自然な形で関係性構築を促し、参加者に新たな生きがい・やりがい・社会的つながり・所属感をもたらします。英国では、医者が患者に地域コミュニティとの社会的つながりを処方する「社会的処方」が知られており、シェッドが重要な役割を果たしています。

実用化イメージ

退職を契機とした社会的ネットワークの喪失は、健康・死亡リスクを高める要因です(Steffens et al., 2016)。コミュニティー・シェッドは、「Shoulder to Shoulder(肩を並べて)」の活動を通じて、退職後の男性を中心に新たな繋がりや役割を生み出し、孤独・孤立を予防する仕組みです。企業との連携では、健康経営・地域共生・ウェルビーイング推進といった分野での共同実証やサービス開発が期待されます。例えば、企業OBのセカンドキャリア支援、健康寿命延伸を目指したプログラム開発、地域CSR活動との統合等の応用可能性があります。こうした協働を通じて、社会的課題の解決と企業価値の向上を両立する新しいモデルを提示することが可能です。

キーワード

研究者

大学院教育学研究科

伊藤 文人 講師 
修士(障害科学)(東北大学)/博士(障害科学)(東北大学)

Ayahito Ito, Lecturer