テラヘルツ波を用いた廃プラスチックの選別装置開発と持続可能な資源循環技術の社会実装
更新:2024/12/02
- 概要
本研究は次世代通信や自動運転等で使われているテラヘルツ波の特性を利用して廃プラスチックの材質を識別することによって、既存のプラスチックリサイクル技術を改善するだけではなく、再生プラスチックの品質評価にも適用でき、高品質の再生プラスチックの安定的な生産が期待できる。容器包装や自動車リサイクルなどにおける多様な課題解決のための装置開発(小型・大型)が容易であり、脱炭素と循環経済社会の実現に貢献できる。
- 従来技術との比較
従来の廃プラスチック識別・選別技術は、比重選別や近赤外線を用いた装置が多い。特に近赤外線の選別技術は膨大なデータが蓄積されており、廃プラスチックリサイクル工場の主な選別技術である。しかし、近赤外線選別装置は黒色プラの識別が容易ではなく、添加剤の有無や劣化の度合いを判断することが難しい。本技術はテラヘルツ波の透過率と吸収率の特性を計測・評価するため、黒色プラ、添加剤有無、劣化程度の判別ができる。
- 特徴・独自性
-
- 近年、脱炭素をはじめ、漂着ごみやマイクロプラスチックのような海洋汚染問題、プラスチック廃棄物資源の海外輸出問題、レジ袋やストローなどの使い捨て容器の増加、コロナ禍の影響による容器包装廃棄物の急増など、世界各国で廃プラ問題に注目している。特に、持続可能な開発目標 (SDGs: Sustainable Development Goals) の達成や循環経済(Circular Economy)の実現が求められている中、廃プラスチック材質の高度な識別と再資源化のニーズが高まっている。
- 東北大学・芝浦工大・静岡大学の研究グループは「プラスチック製容器包装廃棄物の高度選別装置の事業化」に関する研究を行ってきたが、テラヘルツ波の特性を利用して既存の識別装置では識別が難しかった、黒色プラ、添加剤や難燃剤などが含まれている混合プラを識別することができた。また、紫外線や長期使用による劣化の度合いを把握できることも確認している。さらに、今後、需要が急増することが予想される、容器包装、自動車、家電系の廃プラだけではなく、バイオプラスチックを見分ける手法としても有効であることがわかった。
- これらの識別技術は、2022年に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」によって発生する廃プラを適切に選別することに応用することができ、廃プラスチック資源の再資源化による高品質の再生資源の確保に大きく貢献できる。
- 本研究グループは、分野横断研究を行っており、社会工学・資源循環(劉庭秀教授)、光工学(芝浦工大 田邊匡生教授・静岡大学 佐々木哲生教授)、情報科学・ビッグデータ分析(大窪和明准教授)、データ収集及び分析・国際協力(眞子岳特任講師)、社会実験・行動経済学(劉 暁玥助教)などを専門とする研究者が、国内外における社会・経済・環境問題のニーズを吸い上げて、それぞれの課題解決と持続可能な社会形成に向けて幅広い視点で取り組んでいる。国内外の民間企業だけではなく、行政及び研究機関、市民団体などとのコラボーレーションとネットワークづくりも期待している。
- 実用化イメージ
-
国内外における容器包装リサイクル、自動車リサイクル、家電及び家電リサイクルなどのプロセスから発生する廃プラスチックの識別・選別装置開発、再生プラスチックの生産及び品質評価などに応用できる。
- キーワード
研究者
国際文化研究科 国際政治経済論講座、環境科学研究科 資源戦略研究センター(兼)、東北大学グリーン未来創造機構未来(兼)
劉 庭秀 教授
博士(都市・地域計画)(筑波大学)/修士(都市・地域計画)(筑波大学)
Jeongsoo Yu, Professor