筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する肝細胞増殖因子(HGF)を用いた治療法の開発
更新:2025/06/11
- 概要
難治性神経変性疾患の代表で、治療法開発が希求されているALSに対して世界初の組換えHGF蛋白質の脊髄腔内投与による第I相試験を東北大学病院で実施。これをふまえ、2016~2022年ALSに対する有効性と安全性を確認する第II相試験(医師主導治験)を同院と大阪大学附属病院にて実施、終了した。主要評価項目に関して統計学的有意差はなかったが現在、終了後の追加解析を実施中。また、同一製剤を用いた脊髄損傷に対する臨床開発も進行中。
- 従来技術との比較
世界初の組換えHGF蛋白質の脊髄腔内投与製剤、中枢神経系に効率的かつ選択的に送達可能な「脊髄腔内」反復投与を実現する医療機器(皮下ポートと脊髄腔内留置カテーテルキット)と同時開発
- 特徴・独自性
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ALSは難治性神経変性疾患の代表であり、脳・脳幹・脊髄運動ニューロンの系統的変性による全身の進行性筋萎縮と筋力低下が主徴です。呼吸筋障害による致死的疾患でありながら3 ~ 4剤の進行抑制薬承認にとどまるのが現状です。東北大学神経内科では、世界初のラットALS モデルを開発しました(Nagai M, et al. 2001)。HGF 蛋白質の脊髄腔内持続投与による進行抑制効果を同モデルで確認しました。第Ⅰ相・第Ⅱ相試験(治験)を終了し、追加解析による有効性を検証中です。
- 実用化イメージ
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クリングルファーマ㈱、慶應義塾大学(岡野栄之教授、中村雅也教授)、旭川医科大学(船越洋教授)と協働し本剤の医薬品化を目指しています。ALS 第Ⅰ相・第Ⅱ相試験、脊髄損傷の第Ⅲ相試験をほぼ終了しました。製薬企業と連携予定です。
- キーワード
研究者
臨床神経学(とくに神経変性疾患および骨格筋疾患)と臨床遺伝学を専門とし、難治性神経筋疾患の創薬・橋渡し研究に取り組んでいます。