言葉遣いのユニバーサルデザイン
更新:2024/11/22
- 概要
健常な母語話者だけでなく、外国語学習者や失語症患者など、誰にとっても理解しやすい言語表現の性質、すなわち「言葉遣いのユニバーサルデザイン」を探る研究をしています。現在は特に「言語の語順」と「思考の順序」の関係について調べています。語順が違うと脳の使い方がどのように異なるのか、思考の順序はどの程度、言語の語順に影響されるのか、人間にとって最適な言語の語順や思考の順序というものは存在するのか、など。
- 従来技術との比較
主語(S)が目的語(O)に先行するSO語順がその逆のOS語順に比べて処理負荷が低く母語話者に好まれる傾向があること(SO語順選好)が多くの研究で報告されています。しかし、従来の研究は日本語や英語のようにSO語順を文法的基本語順にもつSO言語を対象にしているため、SO語順選好が個別言語の基本語順を反映したものなのか、あるいは人間のより普遍的な認知特性を反映したものなのかが分かりません。
- 特徴・独自性
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- そこで、これまで全く研究されてこなかったOS語順を基本語順にもつ少数民族の言語(カクチケル語とタロコ語)の脳内処理過程を、特に「言語の語順」と「思考の順序」との関係に着目して研究し、その結果を日本語や英語の脳内処理過程と比較しています。
- その際、話者の居住地(グアテマラと台湾)に実験装置を持ち込み、行動実験、視線計測、脳機能計測など多様な手法を駆使して調査・実験を行っています。また、持ち運びのできないMRIなどの大型の装置を使う実験は、話者を日本に招聘して実施しています。
- 実用化イメージ
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(1)効果的な外国語教授法・学習法の開発や、(2)失語症のリハビリプログラムの改善、(3)危機言語・方言の動態保存、などに貢献できる可能性が考えられます。
- キーワード
研究者
大学院文学研究科
小泉 政利 教授
Ph.D.(マサチューセッツ工科大学)/M.A.(オハイオ州立大学)
Masatoshi Koizumi, Professor
これまでほとんど研究されていない少数民族の言語の脳内処理過程を、話者の居住地に実験装置を持ち込み、言語学、心理学、脳科学などの多様な観点から、実証的に検証しています。