行の研究テーマ(11

リチウムイオン内包フラーレンを用いた二次電池の開発

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概要

従来技術との比較

特徴・独自性
  • リチウムイオン内包フラーレン(Li+@C60)を用いた二次電池を開発しています。その中でもLi+@C60をカチオンとしたイオン液体を電気二重層キャパシタ(EDLC) の電解質として用いた[Li+@C60]・EDLCは、広い温度域で高い運動性を示す球形のC60殻内に安定に閉じ込めたLi+ を用いるため、イオン液体中でも高密度で高速蓄電が可能で、高い安全性が確認されています。
実用化イメージ

宇宙などの極限環境下で使用可能な二次電池としての応用が期待されます。さらに、Li+@C60を用いた全固体型二次電池への展開も可能で、飛躍的な蓄電密度の向上が達成できます。

研究者

大学院理学研究科

權 垠相  

Eunsang Kwon

粒界工学による粒界劣化現象抑制に基づく高特性材料の開発

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特徴・独自性
  • オーステナイト系ステンレス鋼やニッケル合金は粒界劣化現象が永年の大きな問題である。当グループの開発した粒界工学制御プロセスは、通常ステンレス鋼の粒界腐食(図1、2)、溶接部腐食、応力腐食割れ、液体金属脆化、放射線損傷などに対する抵抗性を著しく向上させるとともに、高温クリープ破断寿命を顕著に延長(図3)させるなど、粒界劣化現象抑制による著しい特性改善を実現した。
実用化イメージ

この粒界工学制御技術により、金属材料の耐食性や高温寿命の向上が期待できることから、電力・化学プラント配管、高温高圧容器、食品加工機器などの製造業への適用が想定される。

研究者

大学院工学研究科

佐藤 裕  

Yutaka Sato

液体ロケットエンジン・ターボポンプに発生するキャビテーションの諸問題

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概要

従来技術との比較

特徴・独自性
  • キャビテーション現象は、液体を作動流体とする流体機械内部の低圧部において液相が気相へと相転移する現象であり、その非定常性や壊食性が流体機械の振動や騒音、性能低下、損傷などの原因となることで知られています。液体ロケットエンジンのターボポンプでは、メインポンプでのキャビテーションの発生を防ぐことを目的に、入口部にインデューサと呼ばれる軸流ポンプが取り付けられていますが、逆にインデューサではキャビテーションが不可避的に発生します。インデューサに発生するキャビテーションは、推進剤の脈動や回転非同期の軸振動の原因となる「キャビテーション不安定現象」を引き起こす場合があり、問題となります。これまで、独自に開発した気液二相均質媒体モデルを用いた数値解析により、単独翼に発生する非定常キャビテーション特性、翼列に発生するキャビテーションの破断特性、三枚周期翼列に発生するキャビテーション不安定現象の発生メカニズムの解明を行ってきました。さらに、翼にスリットを設けることによるキャビテーション不安定現象の抑制手法の開発を、数値解析を用いて行ってきました。数値解析で予測された最適なスリットを実機インデューサに適用し、JAXA 角田宇宙センターにおいて抑制効果の検証実験も行っています。現在、数値本解析手法を液体水素等の極低温流体系へと拡張し、極低温流体で顕在化することが知られている「キャビテーションの熱力学的抑制効果」の解析を行っています。その他、本研究は原子力発電プラント保全技術、海洋・沿岸安全技術、水質保全、医療分野への応用が可能です。この数値解析手法を産業界で活用したい企業や団体との共同研究を希望します。
実用化イメージ

研究者

流体科学研究所

伊賀 由佳  

Yuka Iga

流動キャビテーションを利用した表面改質方法

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概要

流動キャビテーションを利用した表面改質方法
https://www.t-technoarch.co.jp/data/anken_h/T04-206_T05-248.html

従来技術との比較

特徴・独自性
  • キャビテーションとは、液体の速度の増大に伴い、圧力が低下し、液体の飽和蒸気圧まで圧力が減少した結果、液体が気泡になる現象で、特に微細気泡からなる郡列キャビテーションは大衝撃力を生じます。この現象を応用したキャビテーション・ショットレス・ピーニングは鋼球を用いる方法(ショット・ピーニング)と比較し加工面がスムースでかつ高い疲労強度が達成できます。水槽を用いず、低速水噴流中に高速水噴流を噴射することにより、大気中での施工も可能です。
実用化イメージ

以下のような社会実装への応用が想定されます。
・疲労強度を向上させる加工装置
・圧縮残留応力を付与する加工装置
・動植物育成促進装置

研究者

大学院工学研究科

祖山 均  

Hitoshi Soyama

リンパ節転移リスクをリンパ節の内圧の変化から評価する

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概要

リンパ節転移リスク評価方法
https://www.t-technoarch.co.jp/data/anken/T13-196.pdf

従来技術との比較

がん細胞のリンパ節への転移の有無は、患者の生存率に大きく影響を与える。転移後の致死率が高いことから、早期にリンパ節転移リスクを評価できることが望ましい。しかし、従来の方法(超音波、CT、MRI、PETなど)では、最大短径10mm以下の微小転移巣を同定することは困難であり、早期にリンパ節転移リスクを評価することは困難であった。

特徴・独自性
  • リンパ節転移は多くのがんで見られるものの、現行のCT、MRI、PET、超音波などでは10mm 以下の小さな転移リンパ節の検出が困難です。私たちは、ヒトと同等の大きさのリンパ節を持つリンパ節転移モデルマウスを独自開発し、これを用いた研究で、小さなリンパ節転移の早期段階においてリンパ節内圧が増大することを発見しました。臨床試験でも、転移リンパ節の内圧が正常リンパ節より高いことが確認され、これにより転移の早期発見が可能となります。
実用化イメージ

本技術の応用により、以下の実用化が期待されます。
1 .転移リンパ節の検出を可能にする圧力計測機器の開発
 ・小さなリンパ節転移を高精度で検出
 ・非侵襲的かつ迅速な診断ツールの提供
2 .転移リンパ節の早期診断および治療効果の評価システムの開発
 ・早期転移を検出し、治療進行をリアルタイム評価
 ・治療効果を迅速に判断し、最適な治療を提供
3 .リンパ行性薬剤送達のための新しい薬剤注入機器の開発
 ・精密かつ効果的なリンパ節内注入を実現
 ・がん治療における薬剤送達効率の向上
4 .新規画像解析機器の性能評価および改良
 ・転移リンパ節を検出する新たな画像解析技術の開発
 ・画像診断の精度向上と早期診断の確立

本技術は、圧力計測技術とリンパ節内圧の変化に基づく評価法を活用し、がん診断・治療に新たなアプローチを提供します。これにより、がんの早期発見と最適な治療選択が可能となり、診断・治療の革新に貢献します。

研究者

大学院医工学研究科

小玉 哲也  

Tetsuya Kodama

リンパ節内薬剤投与における溶媒粘度特性の明確化とその免疫応答への影響

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概要

転移リンパ節に対する全身化学療法の奏効率は低い。本発明はリンパ節に直接薬剤を投与する方法(リンパ行性薬物送達法)における溶媒特性、特に粘度の最適値を提示するものである。2024年、岩手医科大学附属病院 頭頸部腫瘍センターにおいて リンパ節転移に対する特定臨床研究(jRCTs021230040) が開始された。

従来技術との比較

転移リンパ節に対する全身化学療法では、転移リンパ節に対する薬物送達量が少ない。リンパ節内の腫瘍増殖にともなう内圧増加や腫瘍巣の形成にともなう微小血管の消失によるものである。本発明ではリンパ節に薬剤を直接投与するリンパ行性薬物送達法での溶媒の最適な粘度域を明らかにした。

特徴・独自性
  • リンパ節内薬剤投与法により、リンパ節転移治療に必要な抗がん剤の量は全身投与の1/1000 ~ 1/100と極めて少量で済みます。そのため、副作用はほぼ無視できるレベルです。また、抗がん剤をリンパ節内に直接投与することで抗腫瘍免疫が活性化することが確認されており、この効果は投与薬剤の溶媒粘度に依存します。溶媒粘度の調整により、薬剤の滞留時間や拡散特性が向上し、免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果が期待されます。さらに、超音波画像ガイド下での精確なリンパ節内投与が可能であり、溶媒粘度に関する技術は国際特許を取得済みです。
実用化イメージ

本技術は、以下のような適応に向けた実用化が期待されます。
1 .頭頸部がん・乳がんの所属リンパ節治療および予防的治療
 ・早期段階でのリンパ節転移制御・外科手術の補助療法
2 .高齢者や基礎疾患を持つ患者に対する低侵襲治療・体力的負担を抑えた安全な治療選択肢
 ・既存治療との併用による治療成績向上
3 .免疫チェックポイント阻害剤との併用による抗腫瘍免疫の強化
 ・免疫応答の増強による治療効果向上
 ・低用量での有効性確保による副作用リスクの軽減
4 .ドラッグリポジショニングおよびジェネリック医薬品の開発
 ・既存薬の新たな適応開発によるコスト削減
 ・新たな治療オプションの提供
5 .新規リンパ行性薬剤投与システムの開発
 ・効率的な薬剤送達技術の確立
 ・患者負担を軽減する革新的デバイスの設計
 
本技術は、薬剤の溶媒粘度を調整することで、がん治療における新たな選択肢を提供し、より効果的かつ低侵襲な治療法の確立に貢献します。

研究者

大学院医工学研究科

小玉 哲也  

Tetsuya Kodama

レーザファブリケーションによる高機能バイオインタフェースの創成

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特徴・独自性
  • 本研究では、レーザ照射を利用して材料表面に様々な機能を付与する手法の開発を行っている。とくにレーザを材料に照射した際に生じる現象を、シミュレーションおよび実験的な手法を用いて明らかにし、新しい機能性インターフェースの創成を行っている。
  • 本研究成果は、生体・医療用デバイスへの応用を始めとし、幅広い分野への波及効果が期待できる。
  • ■ 高機能バイオインターフェースの創成
  • 人工臓器や人工血管、あるいはバイオインプラントなどに利用される材料は、生体組織や細胞に対する高い親和性が求められる。そこで本研究室では、レーザ照射による表面創成プロセスにより「生体に優しい」表面づくりにも取り組んでいる。
  • 本手法により、チタン系材料に対して生体に活性な機能を付与することに成功している。このような機能を持つ材料を生体内に埋入すると、表面にハイドロキシアパタイト(骨や歯の主成分)が自然に析出する。この方法を利用すれば骨との固着性に格段に優れるインプラントを作製することが可能であり、人工関節や歯科インプラントなどへの応用が期待できる。
  • 本研究ではこのような手法を駆使し、バイオ分野への新たなブレークスルーを目指す。
実用化イメージ

研究者

グリーン未来創造機構

水谷 正義  

Masayoshi Mizutani

レアアースフリー永久磁石を目指した強磁性窒化鉄粉末

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概要

6 MGOe以上のBHmaxを示すレアアースフリー強磁性粒子粉末
https://www.t-technoarch.co.jp/data/anken_h/T19-390_T19-706_T19-709.html

従来技術との比較

特徴・独自性
  •  近年、ネオジムの国際相場が高騰しています。脱炭素化を国策として推進している中国において、風力発電用や電気自動車用のモーターとして需要が増大していることが原因とみられます。また、日本国内では経済安全保障の観点からの議論も活発であり、レアアースを含有しない磁性材料が強く求められるようになってきました。なかでも、鉄と窒素のみから成る安価なFe-N 系磁性材料への期待は大きいです。特に、結晶がbct 構造であり、大きな飽和磁化をもつことが予測されているα”-Fe16N2は高い注目を集めています。
  •  しかし、α”-Fe16N2 自体は、Fe-N系化合物をアニールした際に晶出する準安定化合物であり、バルク体として単離した報告はほとんどありません。数少ない報告例も、α”-Fe16N2 と安定相との共晶や、100℃環境で10 日間しか存在しないものなどであり、α”-Fe16N2 単相をバルクとして安定的に単離した例は存在しません。
  •  本発明は、α”-Fe16N2 の安定単離粉末に関するものです。本磁性粉末は、フェライトやアルニコより大きな6MGOe(48kJ/m3)以上のBHmaxを示します。また、金属Fe を上回る221emu/g の飽和磁化値を示し、アルニコ磁石より大きくフェライト磁石と同程度の2kOe(160kA/m)以上の保磁力を示します。本磁性粉末により、レアアースフリーで、かつフェライト磁石やアルニコ磁石より優れた磁石特性が期待され、将来的には希土類系ボンド磁石の一部を代替する磁石材料として、様々な家電用・車載用モーター等への応用が期待できます。
実用化イメージ

以下のような社会実装への応用が想定されます。
・異方性磁石
・圧粉磁石
・ボンド磁石
・その他、モーターなどネオジム磁石の代替磁石としての用途

研究者

大学院工学研究科

小川 智之  

Tomoyuki Ogawa

レアメタルフリー高性能蓄電池の先端ナノテクノロジー

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特徴・独自性
  • 高容量・高出力・高安全性・低コストの次世代蓄電エネルギーデバイスであるポストリチウムイオン電池を実現するために、単原子層物質グラフェン、金属硫化物ナノシート、ナノ結晶活物質、ナノ粒子、ナノ多孔材料などの新しい機能材料の開拓とデバイス応用を研究する。全固体型リチウム二次電池、マグネシウム電池、燃料電池、大容量キャパシタ、ウェアラブル電池などの高性能電極材料・デバイス創製の精密化学プロセスを研究する。
実用化イメージ

ポストリチウムイオン電池および革新的エネルギー材料開発を研究シーズとして素材産業、電池メーカー、電気自動車企業、スマートグリッドや再生可能エネルギー等の電力ビジネス企業との共同研究を積極的に推進する。

研究者

多元物質科学研究所

本間 格  

Itaru Homma

レクテナ発電による中・遠赤外光の電力変換

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概要

無線送電技術であるレクテナを用いた赤外光の電力変換技術です。赤外光を電磁波としてアンテナで吸収して生じる交流電場をダイオードで整流することで電力へと変換します。アンテナの設計次第であらゆる波長の赤外光を電力変換できるため、中・遠赤外光が主体となる300℃以下の物体からの熱ふく射も電力変換可能です。

従来技術との比較

従来の熱発電技術とは全く異なる方法により電力変換を行います。熱ふく射を電力変換するため熱源と素子が接触する必要が無く、耐久性やデバイス設計自由度が高いです。電力変換可能な波長域は材料に依らずアンテナ設計次第で自由に制御することができます。

特徴・独自性
  • 赤外光の波動性に基づいた電力変換を行うため、材料物性に依らず感度波長を自由に制御できることが最大の特徴です。全ての有限温度物体は熱ふく射を放出するため、原理的にあらゆる温度域の熱源から電力を抽出することが可能となります。
  • レクテナ発電はマイクロ波を用いた無線送電技術として既に確立されていますが、赤外光は電磁波の周波数が非常に高いため(1013Hz~)、高速応答するダイオードの開発とエネルギー損失のないデバイス化が課題です。
  • 高速応答ダイオードとしては、金属ナノ粒子を用いたトンネルダイオード技術を新たに提案し、高性能化を達成しています。エネルギー損失のないデバイスとしては、空洞共振器構造に基づくデバイスを新たに提案し、可視~中赤外光の発電を実現しています。
実用化イメージ

あらゆる環境で発電が可能であり薄膜化も可能であるため、自立型センサ等の電源応用が期待できます。

研究者

大学院工学研究科

清水 信  

Makoto Shimizu