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研究者紹介

加藤 一幾 准教授

2023.06.02
農学研究科
生物生産科学専攻 植物生命科学講座(園芸学分野)
准教授 加藤 一幾(かとう かずひさ)先生

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●INTRODUCTION●
東北大学農学研究科は青葉山新キャンパスに位置し、広大な実験施設である圃場を有しています。
今回、この東北大学農学研究科や福島県を舞台に、野菜や果物の研究と地域の活性化を見据えた
利活用に取り組む加藤先生に、ご自身の研究内容や産学連携への想いをインタビューしました。
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 大学受験の際に、植物の研究がしたいと思い、農学部を選びました。食べることが好きで、どうせ
食べるのであれば美味しく機能性が高いものが良いと思っていたことも、今の研究分野に繋がってい
ると思います。私が所属する園芸学の分野では、野菜・花・果物を扱います。収穫後の扱い、いわゆ
るポストハーベストも範疇に入る、幅広く実践的な学問です。私は特に野菜や果物等の生産性や機能
性を向上させるような研究を主に行ってきました。
 
 
写真:研究内容を説明する加藤先生。
 
 私が岩手大学農学部で助教になったのは2011年4月のことです。東日本大震災の影響を受けた農地
で作物をまた作るためにどうすればいいか、何ができるか考えました。答えの一つとして、各地で廃
棄されているしいたけの廃菌床に目をつけ、畑に混ぜ込むと土が改良できることが分かりました。す
なわち、土壌微生物の種類が増え、分解できる物質の種類が増えて、ふかふかの素晴らしい土壌がで
きあがります。その後、2017年4月に卒業した東北大学の研究室に准教授として戻ってきました。
 
 東北大学では国の復興事業である福島イノベーション・コースト構想(実用化開発事業・復興知事
業)にも携わっています。福島県浜通りでは、地域のブランド作物を新たに作り出す・農業人材の育
成を行う実証研究を進めています。色々な作物を育てていますが、例えば葛尾村でのマンゴーの栽培
試験についてご紹介します。
 
 沖縄や九州のマンゴーは6月から8月に出荷のピークを迎えますが、福島県で12月まで遅らせること
が出来れば、お歳暮時期の贈答品として高い付加価値をつけることが出来ます。実際に昨年度は品種
によっては12月の収穫が可能となりました。ただ、冬場も暖かい環境を維持する必要があり、コスト
がかかってしまいますので、なるべく自然の熱源をより上手に利用していくことを考える必要があり
ます。マンゴーについては、まずは生育するかどうかが重要ですので、化学肥料を使っていますが、
同じく特産品とするべく育てているトマト(加熱調理用の「すずこま」という品種)については、前
述のしいたけ廃菌床を混ぜ込んだ土壌を利用しています。露地栽培での実証は終わっておりましたが
プランターのような隔離栽培でも化学肥料を使わなくとも廃菌床だけで遜色ない生育が確認できてい
ます。


写真:福島県葛尾村で成育実験を行っているマンゴー(昨年9月)。順調に色づいています。
金蜜という糖度が20度を超えるとても甘い品種です。

 トマトは日本でも世界でも最も生産されている野菜であることから、トマトについては、研究室で
様々なテーマに取り組んでいます。例えば、トマトの異常果の半数以上を占めると言われる尻腐れ果
(果実の先端が腐敗する生理障害)の詳しい機構さえ、実は分かっていません。この解明も研究室の
テーマの一つです。他にも、青色や赤色の光を照射した際に、トマトの遺伝子や代謝物にそれぞれど
んな変化が生じるかといったこともオミックス解析といった手法を用いて研究しています。また、ト
マトの近縁野生種を用いてビタミンCやアミノ酸、カロテノイドといった機能性成分を蓄えさせるた
めの基礎研究も実施しています。流行りのゲノム編集を用いた研究も行っています。
 
 

写真:研究室で育てているMicro-Tom(小型トマト品種)。様々な実験で用いています。
 

写真:研究室が保有する人工気象室。
この中で一定の生育条件(温度・湿度・光環境)にコントロールし、植物を育てることが出来ます。
赤色・青色などのLEDを照射して花の開花について調べています。
 
 少し毛色の違う研究としては、低温条件下で野菜にオゾン水をかけることで生育を促進することも
明らかにしてきました。現在は冬場にオゾン水をかけて育てることで暖房コストを下げ、二酸化炭素
排出量を減らすための実用研究も進めています。オゾン水の製造機器メーカーと共同研究を進め、園
芸分野での利活用を推進したいと考えています。また、農工連携の一環として東北大学工学研究科と
はプラズマ照射水が野菜の生育等に与える影響についても調べ始めました。病害虫の防除のみではな
く、生育面で良い影響が確認できればと思っています。
 
 
写真:プラズマ照射水発生装置。ノズルからプラズマ照射水が出る仕組み。
工学研究科から提供を受けています。
 
 今後も復興事業も含めて、研究成果を社会に還元するような実証実験や産学連携の取り組みを積極
的に進めていきたいと考えています。大学人としては基礎研究による現象の本質的な理解も欠かせま
せんから、これらを両輪で進めていきたいです。同じ未来を描いている方々と是非協働していきたい
と思いますので、どうぞよろしくお願いします。
 
★産学連携ポイント★
・野菜(トマト、レタス等)・花(デルフィニウム)等の栽培、生産性・機能性向上
・上記のような農作物を活かした復興事業・地域活性化
・土壌肥料
・自然熱の農業への利用
 
↓↓もっと知りたい方はこちら↓↓
・東北大学研究者紹介
・関連事業
 
以上
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