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研究者紹介

大崎 雄介 准教授

2024.01.30
大学院農学研究科 農芸化学専攻 食品天然物化学講座(栄養学分野)
准教授 大崎 雄介(おおさき ゆうすけ) 先生
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●INTRODUCTION●
ビタミンは全部で何種類あるでしょう?正解は脂溶性ビタミンが4種類、水溶性ビタミンが9種類で13種
類です。さて今回は栄養素や食品成分の機能性、特にビタミンKの新たな機能について研究されている大
崎先生にお話を伺いました。大崎先生は農学分野・医学分野双方の知見から、食品機能性と身体機能の改
善、疾患予防に向けた取り組みをされています。是非ご覧ください。
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写真1:研究内容を説明する大崎先生。農学研究科監修飲料「和のチカラ」とともに。

 私は学生時代、現在の所属である栄養学分野に所属し、脂溶性ビタミンの1つであるビタミンKの新たな
機能性について当時から研究してきました。ビタミンKは血液凝固に必須の栄養素として古くから知られて
いますが、骨の形成や血管石灰化(動脈硬化の一種)の抑制など健康寿命の延伸において重要な新しい機能が
各種報告されており、近年改めて注目を集めているビタミンです。ビタミンKは天然のものとしてK1(植
物由来)とK2(主に微生物由来)があります。ビタミンK1とK2は共通の骨格を持ちますが、側鎖と呼
ばれる一部の分子構造が異なります。人間の体内ではどちらのビタミンKもその一部がビタミンK2の一種で
あるメナキノン-4(MK-4)と呼ばれる分子に変換され、組織によってはMK-4の方が高濃度で存在してい
ることが報告されています。
 
図1:ビタミンKの構造(K1、K2、メナキノン4。構造式の黒い部分が骨格で、色付きの分が側鎖)。
ビタミンK2のうち、青色の繰り返し構造が4回のものがメナキノン4と呼ばれ、人間の体内に多く存在す
る。なお、繰り返し構造が7回、8回のように長い側鎖をもつ成分は、チーズやヨーグルト、納豆などに多
く含まれている。
 
 このMK-4はヒトの脳や精巣に多く存在していることが明らかになっており、これが何故なのか調べた
いと考えました。ビタミンKの機能についてスクリーニングを行ったところ、肝臓で、ビタミンKが不足
した際に炎症が起こることが確認できました。炎症モデルラットを用いた実験でも、ビタミンK強化ラット
は炎症のマーカー値が下がり、ビタミンKが炎症を抑えることが裏付けられました。また、肝臓以外の臓器
についても調べてみると、コレステロールからテストステロンが作られることで知られる精巣において、ビ
タミンKが不足するとテストステロンの濃度が減少すること、ビタミンKの添加がテストステロンの産生を
上昇させることなどが明らかになりました。男性においてテストステロンの量の減少が筋肉量の低下や鬱と
関連することが分かっており、ビタミンKの摂取はこうした疾患を抑制する可能性が高いと考えられます。
 
 現在、このテーマについては様々なアプローチで研究を続けています。また、脳細胞の炎症を抑える作用
についてもビタミンKや様々な類縁体(構造が類似した分子)が保有していることが分かってきており、そ
の機構解明についても取り組んでいます。
 
 
 
図2:ビタミンK、ビタミンKの類縁体(GGOH(ゲラニルゲラニオール))はいずれも異なる働きで炎症反
応を抑える役割を果たすことが分かってきている。
 
 ここからは少し違う話になりますが、私は農学研究科を卒業後、10年ほど医学系の腎臓内科関連の研究室
にも在籍し、腎機能に関する研究にも取り組みました。

 血圧が高くなると、その圧力により血管が障害されて破れやすくなります。特に脳や心臓など、重要な臓
器の血管は圧力の格差に弱くて破れやすい構造となっています。このため、血圧を適切な値にコントロール
しましょうという話になり、まずは減塩を勧められて、それでも下がらなければ薬を飲むことになるケース
が多いようです。一方で、減塩によって血圧が下がる理由は割合知られていないかもしれません。血液中の
ナトリウム(Na)濃度は140mEq(=mM)にコントロールされています。食塩の摂取により上昇するNa濃度は
飲水などによって希釈されますが、これによって血管内の体液量が上昇した結果、血圧が上昇することにな
ります。腎臓は水とNaを尿として排出する機能をもっていますので、上手く機能すれば過剰な体液が排出さ
れて血圧が正常値に戻りますが、この排泄が阻害されると体内に体液(水とナトリウム)が残ることになり、
血圧が上昇することになります。酸化ストレスは腎臓からのナトリウムの排泄を少なくするので、体液量の
増加を介して血圧を上昇させることが知られています。我々の研究から、腎臓の尿細管の一部ではナトリウ
ム再吸収の際に、ミトコンドリアからも酸化ストレスが産生されていることが明らかとなりました。

 腎臓は体の水分をコントロールしていますから、腎臓が悪くなると心臓に悪く、心臓が悪くなると腎臓も
悪くなるという悪循環を形成します。心不全で入院しているときに腎臓機能が悪化する患者は予後が悪いこ
とが報告されています。我々は、その原因の一つにうっ血が関与する可能性を示しており、うっ血によって
引き起こされる腎臓機能の悪化や腎障害の機序解明と治療戦略の開発を目指した研究も進めています。
 
図3:うっ血によって引き起こされる腎臓機能の悪化や腎障害の想定機序。

 こうした農学、医学分野双方のバックグラウンドを活かして、食の機能性と身体機能の改善、疾患との関
係などについて研究を進めています。寿命と健康寿命とのギャップについて食品から埋めるということが私
たちの研究チームとしての目標でもありますので、こうした取り組みを進めたい方との連携を希望していま
す。
 
★産学連携ポイント★
・食品からの健康寿命の延伸
・ビタミンの機能性
・腎機能、腎疾患と栄養素
 
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東北大学研究者紹介
【プレスリリース】
 
以上
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