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研究者紹介

焼野 藍子 助教

2024.03.01
流体科学研究所 航空宇宙流体工学研究分野
助教 焼野 藍子 (やけの あいこ) 先生
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●INTRODUCTION●
空気や水の流れは、飛行機や自動車などの移動体や建物の構造など、様々な物に影響しています。こうした
流体の「流れ」を正確に理解することが、精度の良い予測に繋がります。移動体や構造物の設計の向上につ
ながり、空気抵抗の低減や燃費向上の実現を通して、脱炭素社会の実現に繋がっていきます。今回は、航空
宇宙工学・流体シミュレーションがご専門であり、ミクロな表面微小構造からマクロな流れまで幅広に取り
組む焼野先生にお話を伺いました。
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写真1:研究内容を説明する焼野先生。

 私は流体の制御、航空宇宙工学を専門にしています。いわゆる空気や水の「流れ」に対してシミュレーシ
ョンを行い、実験と併せ、飛行機やロケット、自動車等の周辺の流れ・抵抗はどのようになっているのか、
またそれらを制御するためにどんな構造が良いかといったことを研究しています。航空宇宙分野は安全・正
確さへの要求が非常に高い挑戦的な分野です。伝統的な学問でありつつ、最新の計算科学等の技術を導入し
様々な分野に波及する技術革新を牽引していく分野でもあり、非常にやりがいのあるダイナミックな研究分
野です。
 
 最近の具体的な研究内容として、ミクロな凹凸表面が流れに及ぼす影響の解明や、マクロな流れの予測精
度の向上などがあります。一部をご紹介します。
 
 ミクロなテーマの例を挙げますと、材料表面の構造で流れを制御する研究を行っています。航空機や自動
車が移動すると、表面に空気の流れの微小な渦ができます。こうした渦は空気抵抗に繋がるため発生を減ら
すことが重要です。翼や車体自体の全体構造も重要な因子ですが、実は、微細な表面の構造が空気抵抗の低
減には重要な因子であることが分かっており、私たちの研究チームでは、表面に特定の「粗さ」をあえて与
えることで、空気抵抗が下がることを発見しました。既存の技術に比べて、私たちの提案する構造は、どん
な方向からの流れにも効果を持っており、独自の研究成果です。この成果について、産学連携を通して社会
実装に近いところまで進めることが出来ました。しかし、まだ粗さが抵抗を低減することを説明する理論が
確立していないこともあり、開発と並行して研究も精力的に進めています。
 
図1:砂状粗面。モビリティの表面に特定の構造を作ることで空気抵抗を下げ、部材から省エネを実現する
取り組み。ミクロな視点での研究内容。
 
 一方で、マクロな研究の例としては、データ同化という手法を用いてマクロな流れの計算をより精緻に実
現するという取り組みがあります。空気の流れなどはシミュレーションをすれば良いと考えがちですが、複
雑なシミュレーションは計算コストがかかりますし、流れを記述するモデル自体が完全なものではないため
別のアプローチを考える必要が問あります。新しいアプローチとして、実験データとシミュレーションを結
ぶための手法がデータ同化です。最適な実験データをシミュレーションに組み込むことでシミュレーション
自体の精度を上げ、計算コストを下げることができます。
 
 
 
図2:精緻な計算(機体のごく一部における精密計算)を考慮することでマクロな機体の空気流れの精緻な
予測を実現。マクロな視点での研究内容。
 
 また、航空機にとって危険な天候、晴天乱気流を予測するという少し毛色の変わった研究も進めています。
従来の気象予測では予測できない精度、35mという解像度で東京湾上空の乱気流の発生を再現することに成
功しました。精度の高い気象予測は、安全な航空機の運行に繋がります。
 
 このように、分野やスケールを横断して様々なアプローチで流れの科学に迫っています。私は、研究成果
は論文として学術的な価値を持つだけではなく、実社会で活用できるものとしたいという感覚を持っていま
すから、企業と共に課題を解決することにも精力的に取り組んでいます。こうすると良いという結果・デー
タだけではなく、大学からの提案が企業にとって現実的であるかどうかまで、一緒に考えて実現していきた
いと思っています。流れに関心のある企業の方がおられましたらコンタクトして下さい。
 
★産学連携ポイント★
・空気抵抗の低減のための微細構造、設計
・空気・水等の流体の流れ
・航空機・自動車等の移動体周囲の流れ
・シミュレーションと実験、データ同化による精緻なシミュレーション
 
↓↓もっと知りたい方はこちら↓↓
東北大学研究者紹介
【プレスリリース】
 
以上
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