マダニの抗微生物ペプチド


更新:2025/08/25
前の画像
次の画像
概要

マダニはSFTS(重症熱性血小板減少症候群*)ウイルス等のウイルス、リケッチア(細菌の一種)、ピロプラズマ原虫などの病原体を媒介し、人や家畜に甚大な被害を及ぼす最大の害虫です。強力な病原体の媒介者であるマダニは、進化の過程で病原体への抵抗性を確立したと想定されます。我々はマダニが持つ病原体への防御機構に着目し、生物活性分子に含まれる自然免疫関連分子を単離しました。この分子「HEディフェンシン」の機能を抗ウイルス・抗菌剤や医薬品へ活用することを目指しています。

従来技術との比較

本研究はフタトゲチマダニのヘモリンフ(体腔液)由来(HE)ディフェンシン(=抗微生物ポリペプチド)を同定し、その効果を調べました。その結果、抗ウイルス活性、抗菌活性、抗原虫活性と幅広い抗微生物スペクトルを持つことが判明しました。 このようにHEディフェンシンは、医薬、動物医薬、農薬分野における感染症の治療・予防に応用できる可能性を有することが分かりました。

特徴・独自性

●約8万種のマダニ遺伝子ライブラリを作成し、マダニ媒介性疾病の予防・治療薬等の開発研究を推進しています。マダニは新規薬理分子の宝庫です。
●学内外の専門家と協力して、マダニ媒介性疾病の病原体を検出する疫学研究も行っています。
●マダニを用いた殺ダニ剤のアッセイ系もあります。

実用化イメージ

我々が同定した抗微生物ポリペプチド=HEディフェンシンとその活用は、特許取得しました。本研究成果から抗ウイルス・抗菌マスク、抗菌スプレー、マウスウォッシュ、食卓用除菌スプレー等への利用が検討できるため、認可が簡易であることも期待されます。またHEディフェンシンから抗微生物活性が強力なペプチド部位を特定できると、その低分子ペプチドは免疫原性を持たず消化酵素に耐えうると予想されます。体内に長期間残存し、感染防御効果が持続する医薬品開発も可能と考えています。

キーワード

研究者

大学院農学研究科

田仲 哲也 教授 
修士(農学)(帯広畜産大学)/博士(獣医学)(岐阜大学)

Tetsuya Tanaka, Professor