マダニ媒介性感染症の簡便・迅速診断法の開発
- 概要
マダニは人や動物に甚大な被害を与えているウイルス、リケッチア、細菌、原虫などの多種多様な病原体の伝播に関与し得る、優れた疾病媒介能を有しています。このため、マダニ媒介性感染症が世界経済に与える脅威は甚大であり、マダニ媒介性感染症対策は公衆衛生領域や獣医領域においては不可欠です。このように、マダニ媒介性感染症のためのワクチン・治療薬開発に繋がる研究に重要な情報をもたらすものとして、マダニ媒介性感染症を評価する疫学的研究が必要とされています。そこで、我々は疫学的研究に必須なフィールドでの特殊な設備などを必要としない簡易迅速的なマダニ媒介性病原体の遺伝子検出技術を開発することを目指しています。
- 従来技術との比較
本研究では、公衆衛生や畜産の現場で重要な①簡易性、②迅速性、③費用、④現場汎用性などに優れた蛍光LAMP・RPAに、ナノポアシークエンサーMinIONによってLAMP・RPA増幅産物のDNA塩基配列を直接解読することを組み合わせます。その結果、病原体の種類や変異を短時間で検出可能となり、高い新規性・優位性、現場汎用性をもたらします。
- 特徴・独自性
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●(1)核酸等温増幅系LAMP・RPAと小型迅速次世代ナノポアシークエンサーMinIONを組み合わせた独自の診断技術を駆使して疫学調査を実施すること、(2)研究代表者らを中心に研究協力者(獣医)を現地パートナーとする強力なネットワークを駆使できることが挙げられます。
●本提案の蛍光LAMP・RPAと小型迅速次世代ナノポアシークエンサーMinIONを組み合わせた新しい遺伝子検出技術が開発されることで、マダニ媒介性病原体の検出が簡便かつ迅速に行われることが可能となり、食肉産業や地域経済の持続的な発展に貢献することができます。 - 実用化イメージ
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本研究は感染拡大防止対策あるいは侵入防止対策に苦慮しているアジア・アフリカ諸国や欧州・豪州・南米においても普及が期待でき、感染個体を正確に摘発することで当該国における清浄化の推進が可能になります。また、本研究の開発技術によって、日本国内においても、感染拡大防止のために重要であるにも関わらず、マダニ媒介性病原体が微量であるがゆえに正しく摘発ができない(偽陰性判定)初期感染個体の特定が迅速にできます。さらに、本研究の成果は防疫業務を担っている家畜保健衛生所・食肉衛生検査所への開発キット導入も可能になります。
- キーワード
研究者
大学院農学研究科
田仲 哲也 教授
修士(農学)(帯広畜産大学)/博士(獣医学)(岐阜大学)
Tetsuya Tanaka, Professor