マダニの生存戦略と病原体媒介能の解明
- 概要
マダニはウイルス、細菌、原虫等の病原体を媒介し、世界の畜産が被る経済的被害は毎年3兆円に昇る家畜最大の害虫です。我々はマダニの生存能力に着目し、約8万種のマダニ遺伝子ライブラリーを作成しました。ライブラリーを使って、マダニの生存を左右する生物活性分子の特性と機能解析、並びにマダニ体内の病原体の動態解明について研究を行ってます。得られた研究成果は、家畜用ワクチンなどマダニを撲滅する防圧法の開発だけでなく、ヒト向け医薬品の創薬にも活用できると考えています。
- 従来技術との比較
① マダニの臓器別ESTデータベースの構築と吸血・消化と自然免疫の分子機構の解明
⇒ マダニの特徴的な性質(吸血のみで成長・産卵する)に注目し、そのメカニズムを明らかにすることにより、マダニ側を制御する新しい感染症対策につながります。
② マダニの生物活性分子とマダニ媒介性病原体の動態解明
⇒ マダニの吸血・消化と媒介する病原体に対する自然免疫において、重要な役割を果たす様々なタンパク質の特性・機能が解明できます。
③ マダニの生物活性分子を基盤としたワクチンの開発
⇒ マダニが媒介する病原体の制圧が可能になります。
④ マダニ由来の創薬候補分子の選抜
⇒ マダニが持つ抗止血・抗凝固作用、血管拡張作用及び血管新生阻害作用を利用すれば、種々の循環器障害の予防・治療薬の開発につながります。- 特徴・独自性
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●マダニと媒介病原体を阻止するための技術基盤を確立し、新規のマダニ生物活性分子群を創薬に活用する目的での開発研究を推進しています。
●マダニ媒介性疾病の病原体を検出する疫学研究も行っています。学内外の様々な分野の専門家と協力して研究する体制を構築できます。 - 実用化イメージ
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本研究によって、鉄代謝を制御するマダニフェリチンがマダニの生存基盤に重要な役割を担うことが判明しました。このことでフェリチンに対する遺伝子制御や抗体を応用したワクチンなど新規のマダニ防圧法の開発が可能となります。マダニは新規薬理分子の宝庫です。遺伝子やタンパク質、生存戦略の研究により、マダニやマダニ媒介性疾病の防圧特効薬の開発だけでなく、ヒトの循環器障害、ガン等の治療薬開発に結び付く発見にもつながります。人類の医療に貢献出来る可能性が期待されます。
- キーワード
研究者
大学院農学研究科
田仲 哲也 教授
修士(農学)(帯広畜産大学)/博士(獣医学)(岐阜大学)
Tetsuya Tanaka, Professor