抗酸化能を活用する骨破壊性疾患の阻止


更新:2026/05/20
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概要

骨破壊性疾患(歯周病・顎骨壊死・関節リウマチ等)の病態中心には破骨細胞の過剰活性化がある。破骨細胞の分化・活性化を誘導するRANKLの細胞内シグナル伝達には活性酸素種(ROS)が重要な役割を担っている。一方、ROSは過剰蓄積により細胞傷害をきたすため、細胞はその防御機構として転写因子Nrf2を介した抗酸化酵素群の発現増強による抗酸化能の亢進機構を備えている。我々は、酸化ストレス応答を制御するKeap1/Nrf2経路に着目し、Nrf2を活性化することで破骨細胞分化・骨吸収を抑制できることを細胞・動物モデルで実証してきた。また、天然由来化合物および合成低分子化合物の中からNrf2活性化能を持つ候補物質を同定し、新規骨破壊抑制剤としての応用を目指した研究を展開している。

従来技術との比較

骨破壊抑制の既存治療薬として、ビスフォスフォネート製剤やRANKL抗体(デノスマブ)が臨床応用されている。これらは長期使用による顎骨壊死(BRONJ)などの副作用リスクにおいて課題が残る。既存薬はRANKLシグナルの遮断を主たる作用機序とするのに対し、本研究が標的とするNrf2活性化は酸化ストレス制御を介した破骨細胞抑制という異なる経路であり、既存薬との作用機序的差別化が明確である。

特徴・独自性

歯周組織細胞における機械的ストレスとRANKL誘導の関係を端緒として(JBMR 2002)、Keap1/Nrf2経路が破骨細胞分化を制御するという基礎的知見を世界に先駆けて示した点が本研究の根幹をなす。現在はAIを活用し独自にスクリーニングした低分子化合物について、RANKL刺激による破骨細胞誘導系・骨吸収アッセイ・TRAP染色による検証を進めており、既存の抗酸化化合物とは異なる新規骨保護作用を持つ候補物質としての可能性を追求している。

実用化イメージ

歯周病・骨粗鬆症・薬剤関連顎骨壊死など骨破壊を伴う疾患は超高齢社会において増加の一途をたどっている。Nrf2活性化を機序とする新規化合物は、既存薬の副作用リスクを回避しつつ骨保護効果を発揮する次世代治療薬候補として期待される。製薬企業・バイオベンチャーとの共同研究により、リード化合物の最適化・前臨床試験・製剤化を推進したい。また、機能性食品・サプリメント分野においても、Nrf2活性化成分を含む骨保護素材の開発という形での社会実装が見込まれる。

キーワード

研究者

病院
口腔育成系診療科
矯正歯科

菅崎 弘幸 講師 
博士(歯学)

Hiroyuki Kanzaki, Lecturer