味覚記憶と食行動を再生する摂食リハビリテーション技術


更新:2026/04/22
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概要

高齢者の低栄養や誤嚥性肺炎の背景には、単なる嚥下機能低下だけでなく、「食欲低下」
や「味覚の変化」が深く関与しています。本研究では、味覚は固定的なものではなく、訓
練により改善可能な「可塑的機能」であることを明らかにしました。実験的研究により、
複数の味覚刺激を用いた反復トレーニングによって味覚感受性が有意に向上することが示
されています。また、臨床現場では、患者が過去に好んでいた食品や味の記憶を活用する
ことで、摂食行動の回復や経口摂取量の増加が確認されています。

従来技術との比較

従来の摂食・嚥下リハビリテーションは、嚥下機能や食形態の調整に主眼が置かれていま
した。一方、本研究は「食べる意欲」や「味覚記憶」という心理・神経的側面に着目し、
機能回復だけでなく行動変容を促すアプローチを提示します。これは、従来の機能訓練中
心のモデルとは本質的に異なるパラダイムです。

特徴・独自性

本研究の独自性は、味覚を固定的な感覚機能ではなく、訓練によって変化し得る「可塑的
な機能」として捉え、その向上が実証されている点にあります。さらに、味覚という感覚
だけでなく、個人の食に関する記憶や嗜好、そして実際の摂食行動までを一体として捉え
ることで、「記憶・感覚・行動」を統合した新たなモデルを提示している点も大きな特徴
です。加えて、こうしたアプローチは特別な機器や侵襲的な処置を必要とせず、日常的な
食事や簡便なトレーニングを通じて実践可能であるため、医療・介護現場においても導入
しやすく、高い実装性を備えています。

実用化イメージ

食品企業における高齢者向け嗜好設計、医療・介護現場での摂食支援プログラム、味覚ト
レーニングキットやリハビリアプリの開発などに展開可能です。特に、個人の嗜好履歴を
活用したパーソナライズド栄養支援や、食事体験の設計(フードUX)への応用が期待され
ます。

キーワード

研究者

大学院医学系研究科

海老原 覚 教授 
博士(医学)(東北大学)

Satoru Ebihara, Professor