リンパ節内薬剤投与における溶媒粘度特性の明確化とその免疫応答への影響


更新:2025/06/12
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概要

転移リンパ節に対する全身化学療法の奏効率は低い。本発明はリンパ節に直接薬剤を投与する方法(リンパ行性薬物送達法)における溶媒特性、特に粘度の最適値を提示するものである。2024年、岩手医科大学附属病院 頭頸部腫瘍センターにおいて リンパ節転移に対する特定臨床研究(jRCTs021230040) が開始された。

従来技術との比較

転移リンパ節に対する全身化学療法では、転移リンパ節に対する薬物送達量が少ない。リンパ節内の腫瘍増殖にともなう内圧増加や腫瘍巣の形成にともなう微小血管の消失によるものである。本発明ではリンパ節に薬剤を直接投与するリンパ行性薬物送達法での溶媒の最適な粘度域を明らかにした。

特徴・独自性

リンパ節内薬剤投与法により、リンパ節転移治療に必要な抗がん剤の量は全身投与の1/1000 ~ 1/100と極めて少量で済みます。そのため、副作用はほぼ無視できるレベルです。また、抗がん剤をリンパ節内に直接投与することで抗腫瘍免疫が活性化することが確認されており、この効果は投与薬剤の溶媒粘度に依存します。溶媒粘度の調整により、薬剤の滞留時間や拡散特性が向上し、免疫チェックポイント阻害剤との併用による相乗効果が期待されます。さらに、超音波画像ガイド下での精確なリンパ節内投与が可能であり、溶媒粘度に関する技術は国際特許を取得済みです。

実用化イメージ

本技術は、以下のような適応に向けた実用化が期待されます。
1 .頭頸部がん・乳がんの所属リンパ節治療および予防的治療
 ・早期段階でのリンパ節転移制御・外科手術の補助療法
2 .高齢者や基礎疾患を持つ患者に対する低侵襲治療・体力的負担を抑えた安全な治療選択肢
 ・既存治療との併用による治療成績向上
3 .免疫チェックポイント阻害剤との併用による抗腫瘍免疫の強化
 ・免疫応答の増強による治療効果向上
 ・低用量での有効性確保による副作用リスクの軽減
4 .ドラッグリポジショニングおよびジェネリック医薬品の開発
 ・既存薬の新たな適応開発によるコスト削減
 ・新たな治療オプションの提供
5 .新規リンパ行性薬剤投与システムの開発
 ・効率的な薬剤送達技術の確立
 ・患者負担を軽減する革新的デバイスの設計
 
本技術は、薬剤の溶媒粘度を調整することで、がん治療における新たな選択肢を提供し、より効果的かつ低侵襲な治療法の確立に貢献します。

キーワード

研究者

大学院医工学研究科

小玉 哲也 教授 
博士(工学)(東北大学)/博士(医学)(東北大学)

Tetsuya Kodama, Professor