計量経済学を基盤とした社会政策の科学的検証と実装


更新:2025/10/16
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概要

社会政策や経営戦略の効果を科学的に評価し、実証的根拠に基づいて改善していくことは、公共部門・民間企業・地域社会のいずれにおいても重要です。近年、日本でもエビデンスに基づく政策立案(EBPM)の推進が強調されていますが、実際には伝統的な行政データの活用に偏る傾向があり、企業や地域が有する多様で豊富なデータ資源が十分に活かされてきませんでした。公共・民間・学術の各主体が協働し、社会全体の課題解決に資する知見を共有・活用する仕組みを構築することが求められています。

本研究は、計量経済学的手法を基盤として、行政や企業が実施する政策・施策の効果を科学的に検証し、その成果を社会実装へとつなげることを目的としています。行政記録データに加え、民間企業が保有する消費・労働・教育・健康関連などの様々なデータを活用することで、公共政策から企業施策まで幅広く因果効果を評価し、エビデンスに基づく施策設計の高度化に貢献します。

従来技術との比較

従来の政策評価や社会調査は、主に記述統計やケーススタディに依存しているものが多く、一般化可能な因果関係の特定が不十分でした。また、民間企業の施策についても効果検証は限定的に行われるに留まってきました。本研究は、計量経済学的因果推論(回帰不連続デザイン、操作変数法、イベントスタディ等)を用い、行政・企業双方の大規模データや非伝統的(オルタナティブ)データを対象にすることで、従来の分析に比べて頑健かつ実践的な評価を可能にします。

特徴・独自性

・種類や継続性を問わず、多様なデータを統合的に活用し、政策・施策効果を包括的に検証。
・因果推論に基づく精緻な評価手法を適用し、単なる相関分析にとどまらない科学的根拠を提供。
・教育・労働・福祉・都市・消費行動など、幅広い領域に横断的に適用可能。
・研究成果を政策改善や企業戦略の設計に直結させることで、産学官連携による社会実装を推進。
・自治体職員や企業の分析担当者に対する統計・計量教育を行い、現場が自らデータ分析と改善を継続できるサイクルの構築に貢献。

実用化イメージ

行政:教育格差是正、福祉制度設計、労働市場施策、都市環境政策などに科学的根拠を提供。
企業:福利厚生制度、健康経営、労働環境、リスキリング施策などの効果を検証し、戦略改善に活用。
社会全体:行政・企業・研究機関のデータと知見を結びつけることで、持続可能かつ効率的な社会システムの構築を目指す。

キーワード

研究者

大学院経済学研究科

黒田 雄太 講師 
博士(経済学)

Yuta Kuroda, Lecturer