ナノオーダーで抗がん活性を有する低分子化合物
更新:2025/06/12
- 概要
Histone deacetylase(HDAC)阻害剤およびphosphatidylinositol3-kinase(PI3K) 阻害剤は、有望ながん分子標的薬剤でありますが、単剤使用での効果は限定的です。この2剤の併用は殺細胞効果の相乗作用をもたらす報告があることから、発明者らはHDAC/PI3K 2重阻害剤の探索を行いました。数百種類のPI3K 阻害活性を有する化合物をスクリーニングしたところ、既にHDAC 阻害剤として知られるロミデプシン(FK228)およびその類縁体にPI3K 阻害活性があることを見出しました。
類縁体FK-A11 は、前立腺がん細胞(PC-3) やHDAC 阻害剤に抵抗性を有する大腸がん細胞(RKO、CO115)に対して、SAHA(HDAC阻害剤)とLY294002(PI3K 阻害剤)の併用よりも高い殺細胞効果を示しました。なお、この濃度においては、非がん細胞であるKMST6 細胞は顕著な細胞死を生じませんでした。
また、脂質代謝に関わるLIPIN1 遺伝子の抑制により、FK-A11 の殺細胞効果、抗腫瘍効果が増強することがわかりました。- キーワード